コラム

次のキーテクノロジーは音声、次の覇者はAmazon

2016年04月06日(水)17時00分

 Microsoft、Yahoo!、Google、Facebook、Apple・・・。わずか20年ほどのインターネット商用利用の歴史の中で、激しい覇権争いが何度も繰り返され、新しい技術が出るたびに覇者がころころと変わってきた。今はスマートフォン全盛時代で、AppleとGoogleが覇権を2分しているように見える。このまま2大覇者の時代が続くのか。それとも新たな覇者が登場するのか。再び覇権争いを引き起こすテクノロジーは何になるのだろうか。

 そのテクノロジーは、音声技術ではないかと思う。なぜならパソコンのキーボード入力よりも、さらにはスマホのフリック入力よりも、音声コマンドを発声するほうが人間にとってより自然だからだ。

 次の覇権争いは音声技術が引き金になって起こり、覇者はAmazonになる。断言するにはまだ少し早いかもしれないが、そうなる兆しが見えてきたように思う。

予想を上回る大ヒットAmazon Echo

 そう思う最大の根拠が、Amazonの家庭内バーチャルアシスタントEchoの大ヒットだ。

 バーチャルアシスタントとは、音声で質問すれば答えてくれたり、簡単な作業をしてくれる技術のこと。バーチャルアシスタントは、スマートフォンに搭載されているので、利用したことがある人も多いだろう。iPhoneだと「ヘイ、siri」、Android端末なら「OK、google」と話かければ、天気予報や、株価を教えてくれたり、目覚まし時計やカーナビを設定してくれたりする。

【参考記事】進化するバーチャル・アシスタントとの付き合い方

 そのバーチャルアシスタントを円筒形のスピーカーの形状にして、家庭向けの設置型として販売しているのがAmazonのEchoという製品だ。Amazon Echoは日本未発売のため日本国内で話題になることは少ないが、米国で今、爆発的に売れているようだ。

 Amazonはその出荷台数を公表していないが、Amazonの米国サイトのベストセラーリストの上位に常にランクインしているし、昨年の米国のクリスマス商戦の初日であるブラックフライデー(11/27)には、100ドル以上の商品のベストセラー1位だった。

 Amazonの関係者をインタビューした米国メディアBusiness Insiderの記事「The inside story of how Amazon created Echo, the next billion-dollar business no one saw coming(誰も予想できなかった次の10億ドル事業、Amazon Echoの開発秘話)」によると、Amazonの担当者にとってもEchoのヒットは驚きだったようで、出荷予測は実際の出荷台数よりも桁違いに少なく設定していたという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story