コラム

ロボットを通じてALS患者の友人と過ごしたかけがえのない時間

2015年12月08日(火)12時13分

 またOriHimeは吉藤さんでさえ、想定していなかった使われ方をし始めたという。

 ある若い父親は、OriHimeを自転車のカゴに乗せて街中を走り回ったという。息子は生まれつき病弱で、ずっと入院したまま。抱っこや肩車もままならない。そんな息子を外に連れ出したい。そんな父親にとって、OriHimeは息子の分身に見えるのかもしれない。外の景色を見せるだけならスマートフォンで十分なように思えるが、息子の分身を連れ出せるということが父親にとって何より嬉しかったのだろう。「お父さんが一番、はしゃいでました」と吉藤さんは言う。

 お花見や餅つきなど、家族や親戚が集まるイベントにOriHimeを持ち出す家族もいるという。

 下の動画は、ノルウェーの公共放送の番組の一部だ。吉藤さんが知らないところでOriHimeがノルウェーに持ちだされて、ノルウェー人と結婚した日本人女性の手に渡り、ノルウェーのテレビで特集されたのだという。OriHimeはこの家族の自宅に設置され、入院中の夫が操作している。会話がノルウェー語なので、幼い娘と入院中の父親が何を話しているのかは分からないが、二人の間に流れる感情を感じ取ることは可能だ。最後に娘がOriHimeをハグしている。これこそが、スマートフォンでは絶対に引き出せないユーザーのしぐさであり、感情だ。

ノルウェーのテレビで特集されたOriHimeの動画
http://www.nrk.no/dokumentar/xl/er-pappa-via-robot-1.12282264

 ソーシャルロボットは、われわれの心に直接インパクトを与えることのできる、これまでにない電子デバイスなのだと思う。そしてそのインパクトは、われわれの想像を超える大きな力なのかもしれない。


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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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