アメリカ離れ、対中接近へ──『文明の衝突』の罠に陥る日本
米中貿易摩擦と同時に進む日中首脳の親密化 Lintao Zhang/GETTY IMAGES
<米メディア発「真珠湾発言」と「日朝接触」報道で喜ぶのは誰か――対中制裁を無にする「再アジア化」の歴史は繰り返される>
米ワシントン・ポスト紙電子版は8月28日に2つのニュースを伝え、日本に衝撃を与えた。
6月7日にホワイトハウスで日米首脳会談が行われた際に、冒頭でトランプ大統領が「私は真珠湾を忘れない」と安倍晋三首相に不満を示したという。対日貿易赤字を抱えるアメリカが日本の経済政策を批判したもの、と同紙は解説している。
もう1つは、7月に日本と北朝鮮の情報当局がベトナムで極秘接触していたことだ。日米両国は同盟国として対北問題で緊密に連絡し合うと約束したにもかかわらず、日朝の接触は伝えられていなかった。
日米間の隙間風を伝える2つのニュースはどちらも政策当局からのリークとの見方がある。「真珠湾発言」は安倍政権の官邸外交に反発する日本の霞が関が流したもので、「日朝接触」の出どころは中国だという。
非核化交渉は6月12日の米朝首脳会談以降、うまくいっていない。北朝鮮が朝鮮戦争の終戦宣言を求めるのに対し、米側は非核化の具体的行動を要求し、折り合いがつかない。
いら立ちを募らせるトランプは、非核化交渉が不調に陥った背後に中国の存在がある、と批判している。北朝鮮を対米外交の駒として使っている、というのだ。そこで中国が日朝秘密交渉をリークして、トランプの怒りの矛先を日本に向けさせようとしたというわけだ。
こうした対立劇はハーバード大学の政治学者サミュエル・ハンチントン教授が96年に書いた論考『文明の衝突』(邦訳・集英社)そのものだ。同書によると、ヒューマニズムを基盤とする西洋文明の代表者アメリカは早晩、儒教の代表者である中国と世界秩序をめぐって激突する。
「精神的なぬくもりを感じさせない」冷酷な宗教である儒教は個人よりも集団に重きを置き、権威と階級などを重視する。独裁体制を支えてきたイデオロギーでもあるので、中国も北朝鮮も儒教を放棄しない。中国が考える国際秩序は国内秩序の延長線上にあり、国力の増大に伴い西洋中心の秩序に挑戦してくる。
そこで問題となるのは日本だ。「アジアにおけるアメリカの影響力が小さくなると、日本は<再びアジア化>すべきだとする考えが日本国内で勢いを増し、東アジアの舞台で中国が改めて強い影響力を持つのは避けられないと考えだすだろう」と、ハンチントンは書いている。
既にそうした前例があった。89 年に中国が天安門広場で民主化を求める市民と学生を弾圧した後、自由主義陣営が対中制裁を科した。だが92年、冷戦崩壊の隙を突くかのように日本は天皇を訪中させ、欧米の結束を崩壊させた。日本には西洋文明に対する「裏切りの前科」がある。
不誠実な「二枚舌」外交
90年代以降から現在に至る東アジア情勢を眺めると、「文明の衝突」論にも一理ある。ワシントン・ポストが誰のためにリークを報じたかは分からない。ただ「米国離れ」や「二枚舌外交」と欧米から見られても仕方のない不誠実さは日本側にある。
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