コラム

中国から消えた「尖閣」地図、無印良品を襲った焚書の炎

2018年02月17日(土)15時00分

毛ははっきりと、「日本の領土沖縄」と話している。その発言は58年の『世界地図集』での「魚釣島と尖閣諸島は琉球群島に属する」との描き方と一致する。中国の公式見解は一貫して、「魚釣島と尖閣諸島は琉球群島の一部」だった。当時は毛以下、誰も琉球群島こと沖縄と尖閣諸島の帰属を区別しなかった。

このような地図は決して1冊や2冊ではない。尖閣諸島の所有権を唱えだすまでは、ほとんどが以前の地図を踏襲していた。だが21世紀に入って覇権主義的な海洋進出を始めると、北京の古書店街から以前の地図類は姿を消した。政府の役人が訪れては没収して回ったからだ。中国外務省をはじめ、政府の公文書館内に保管していた地図も「極秘」扱いとなり、閲覧できなくなった。

2月1日、中国外務省の会見で日本の記者が大胆にも「日本企業のカタログどころか、中国外務省の会見場の地図にも魚釣島が印刷されていない」と問いただした。そう指摘されても、同省が会見場に58年の地図を設置することはない。それどころか、世界各国の出版物への口出しばかりが続くだろう。

<本誌2018年2月20日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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