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上司の「終活」──人生100年時代の上司論
人生100年時代において、この期間はリスクでしかない。
多くの企業は、役職定年の制度を設けている。組織の新陳代謝を促進させるためでもあるし、組織マネジメントレベルを維持させるためでもある。
山口周氏のベストセラー『ニュータイプの時代』にも記されているとおり、環境がどんどん変化する現代において、過去の経験は無価値化している。感度が研ぎ澄まされたプロフェッショナルマネジャーならいざ知らず、平凡な上司なら、過去の経験に頼らず自己鍛錬をつづけ、長年マネジメント能力を維持するのは難しい。
本人のためにも、組織のためにも、役職定年後に実務担当者に戻るほうがいい。実務から長く離れれば離れるほど、若手社員たちと同じパフォーマンスが出せなくなる。そのため実務に戻るなら、できれば早いほうがいいのだ。
だから、これからの上司は10年をめどに「終活」すべきだ。会社の指示に従っていると、いつまで上司という人生を歩まなければならないか、わからない。自分で終活することを私はお勧めする。
上司の「終活」とは?
終活とは「人生の終わりについて考える活動」のことを指す。つまり、上司の終活とは、「上司という人生の終わりについて考える活動」のことだ。
辞めるのでもなく、引き継ぐのでもない(少子高齢化の時代に、上司を引き継いでいったら組織は上司ばかりになる)。終わらせることだ。
繰り返すが、自分自身で終わらせること。それが「上司の終活」だ。
私の支援先に、53歳で部長を自ら"終わらせた"方がいる。優秀な部長だった。肩書が部長なので、会社からいろいろな役割を与えられた。現場の実務がほとんどできなかった。だからその後、事業部の統廃合が繰り返され、32人いた部下が4人に減っていったタイミングで、経営陣と話し合い、1年半かけて部長を終わらせた。
役職手当が減り、年収も20%ほどダウンした。しかしその分、現場に戻ることができた。勇気の要る決断だったが、上司をはやく終わらせないと、人生そのものの死期が近付くと考えたようだ。
上司を終わらせることで、今後の長い人生の「見通し」がたつようになった。定年後も、自分の専門性を活かして働きつづけられることもわかった。それが一番のメリットだったと、彼は振り返る。
しつこいようだが、上司のまま逃げ切ることはできない。もし逃げ切ったとしても仕事人生は、そこで終わらない。これからの時代、上司になったら、自分自身で終活することをお勧めする。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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