コラム

上司の「終活」──人生100年時代の上司論

2019年11月26日(火)17時00分

「逃げ切れる」思考の50代管理職が組織の新陳代謝を阻害する(写真はイメージ) laflor-iStock

<上司の立場に安住し、終身雇用でいちばん恩恵を受けているくせに働かない50代は上からも下からも問題視される不良管理職に落ちかねない>

冗談のような本当の話


「冗談だろ?」

初対面なのに、礼儀を欠いた言葉遣いをしてしまった。相手は大手企業の課長。52歳。「またまた御冗談を」と言えばよかったのに、あまりに時代遅れな感覚に触れ、理性が飛んだ。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。ある企業の経営者に頼まれ、この課長と面談しているときに言われた。


「あと10年、凌げば逃げ切れるじゃないですか」

と――。

この課長は、かなり以前から経営陣に目を付けられていた。なかなか営業目標を達成しないから、どういうつもりで組織マネジメントをしているのか。本音を聞きだしてほしいと言われ、私が面談に臨んだ。そして言った第一声がコレである。

年収1500万ほどもらっている課長の、この「逃げ切れるじゃないですか発言」にはあきれた。動転して「冗談だろ?」と、口にしてしまったのも無理はない気がする。

会社に対する誠意を、まるで感じられなかったからだ。

埋めがたい意識の差

日経BP社の調査によると、若手社員(30代以下)の3割以上が、「50代の働きが十分ではない」と答えている。また、「日本型雇用システムにおいて最も恩恵を受けているのは50代」という回答もあった。若者たちほど、終身雇用や年功序列といった仕組みに違和感を覚えているのだろう。

ところが30代の意識と異なり、50代は自画自賛だ。自分たち50代は、十分な働きをしているし、日本型雇用の恩恵を受けているどころか、不遇な時代を送ってきた、と感じている。(いずれも日経BP社調べ)

どちらの感覚が正しいかは、経営陣がいちばんわかっている。現実はシビアだ。

希望退職ドミノが止まらない医薬品業界や大手銀行のみならず、2018年度決算で最高益を出したキリンでさえも、45歳以上を対象に早期退職を募った。

好業績であっても「選択と集中」による事業部の統廃合、売却は増えるいっぽう。とくに実務を行わない「上司」という肩書の人への風当りは強い。

人生100年時代と言われる昨今、上司のまま定年まで逃げ切れるはずがないのだ。

上司は10年で終わりにしよう

一般的に、上司という肩書は係長、課長、部長の3種類と言われる。

それぞれの「昇進平均年齢」を調べてみると、係長が32.7歳、課長が39.4歳、部長が47歳だ(「般財団法人 労務行政研究所」調べ)。

ということは、32歳から上司としての業務が増えていき、課長になる40歳ごろには、現場での実務からほとんど離れた状態で働くことになる。

大卒22歳で入社した場合、32歳までの10年が実務担当者。その後、定年退職する60歳までの28年間を「上司」として過ごす。これが最近までの日本企業の定番だったと言えるだろう。

もし40歳で上司になったとしても、18年が実務担当者だ。その後の20年が上司。こう考えると、上司と呼ばれる人は、上司をしている期間が、かなり長いことになる。

プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに最大5.98兆円を追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story