コラム

森喜朗会長はなぜ東京オリンピックに君臨するのか

2021年02月06日(土)19時33分

2月4日、女性差別的な問題発言を撤回した森喜朗会長 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<昭和のオリンピックから脱却し、令和のオリンピックが行われることを期待する>

オリンピック開催を巡る1月の報道と森会長の「差別発言」

コロナ禍の緊急事態宣言下の1月、開催まで半年を切った東京オリンピックをめぐる報道が盛んになされた。

1月の23、24日に朝日新聞社が実施した全国世論調査https://www.asahi.com/politics/yoron/ではオリンピックについて「今夏に開催」は11%にとどまり、「再び延期」が51%、「中止」が35%だったとの報道があり、国民のほとんどが反対するオリンピックを強行するのかとの国内外の非難が高まり混乱を極めた。

事態を収束させるべくIOCバッハ会長が1月28日、「ことし7月23日の開幕に完全に集中している」と記者会見に応じ、コーツ副会長も2月3日に「開催は100%」とし「観客を入れるかについては3月にも判断」と中止論のこれ以上の拡大回避に努力していた。

そうした矢先に、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の「女性蔑視」発言が炎上している。「何が問題だったのか」を理解して釈明会見に挑んでいないため、逆に火に油を注ぐ結果となっている。発言内容は看過できないが、逆にそのような「老害」とされる人物が、なぜ関係者にとって「余人を持って代えがたい」存在として君臨しているのかについて考察したい。

森会長の昭和の時代の得意技、調整能力、義理人情

1984年のロス五輪以降、IOCは商業主義に転換し成功を収めた。オリンピックは儲かり、開催国の政権の支持にも繋がるとして立候補都市が殺到する。それらの招致都市を競わせ、有利な条件で開催都市契約を締結し開催するのだ。その「貴族的な」要望が追加負担を開催都市の納税者に要求するものだとしても、立候補時にその予算で可能と提案してきたのは開催都市のほうだとして突っぱねてきた。開催に当たっての運営のノウハウもなく人生で初めて就任する組織委員会メンバーは、IOCの意見を伺い従うしかないことも多かった。

それが、このコロナ禍で変化しているらしい。IOCにとっても、延期も、世界的なパンデミック下での開催は初めてだ。感染下での安全な開催について、様々な実験を行っている組織委員会と立場が逆転しつつある。

緊急事態宣言下の厳しい世論を伝え、IOCが求める通常のスタイルでの開催にこだわり続けると開催できない可能性があると交渉し、組織委員会が様々なIOCの要望を却下している。

象徴的なのは開閉会式には全参加選手を参加させたいとするバッハ会長の要望を森会長が退け、参加人数は半減させ簡素化する方向で合意を勝ち取ったとか、また「貴族的」とされてきた宿泊ホテルのグレードダウン、専用のハイヤー等廃止がIOCに受け入れられたと聞く。

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story