World Voice

ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々

新町智哉|ミャンマー

年の瀬に飛び込んできたミャンマーニュースとヤンゴンの大晦日

2018年MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. のイメージ広告に使用した作品

皆さん、大晦日してますか?
唐突に何を言い出すのかという話ですが、私は大晦日していません。
昨日の記事にも書いたのですが、一昨日朝から具合が悪いなと思ったら夜中には38.5度まで熱が上がり、平熱が35度台の私には中々キツイ体調不良でした。
次の朝には熱も下がり現在、割と元気ではありますが、コロナにしろインフルにしろ風邪にしろ大事を取って年末年始は引きこもる事になりそうです。

そもそも、この熱い街(色んな意味で)ミャンマーヤンゴンでは日本人の私は全く年の瀬感も正月感も感じる事は難しいのですが、体調不良のせいで出かけることもなく更に感じる事なく過ぎていきそうです。
寝正月といえばそれっぽくなるのかもしれませんが。

さて、年の瀬に嫌なニュースが飛び込んできました。

ミャンマー、スー・チーの裁判が結審 禁固刑合計33年で政治生命絶つ狙いか

これに関して詳しい事はああだこうだとは言いません。
ただ一言

「片腹痛いわ!」

と歌舞伎のやうに大見得を切って吐いて捨て、大晦日の大掃除で汚れてしまった心だけでも綺麗にして正月を迎えたいと思います。
ただただスーチーさんの無事を祈ります。

さて、それでは2022年、最後の記事になる今回。
今年だけでなく少し私の事も含めて様々振り返りたいと思います。
多少長くなるかもしれませんがお付き合いいただけると幸いです。
昨日の記事も先に読んでいただければ流れがわかりやすいかもしれません。

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思い返せばこのWorld Voiceで連載が始まったのが昨年の4月。
きっかけはクーデターが起こった2021年2月末に私の自宅に軍から催涙弾が撃ち込まれた事件の事をnoteに書いたものが担当の方の目に留まった事でした。

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準備を進め、さあいよいよ連載をスタートしようという日に北角氏が拘束される事件が起こり、
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96276.php
本当に大丈夫かどうか担当の方からも心配されたものです。
当初から慎重に発信していかなければならないと考えてはいたところでしたが、更に警戒レベルを上げてやっていかないと本当に大変な事になるなと緊張感がありました。

北角氏と私は一緒に映画も作った事があるような旧知の仲です。
表立って彼のジャーナリスト活動を応援した訳ではありませんが沢山のミャンマー人の人たちが応援しているのを見て誇らしく感じていたのは間違いありません。
そしてそんな日本人ジャーナリストが拘束された時、軍はどんな行動に出るのか?
果たして自分は本当にここに居て大丈夫なのか?

当時は夜中の1時から朝の9時までインターネットが遮断されていました。
これも今考えるととんでもない事だと思います。
電話はかろうじて通じますが、全て盗聴されてもおかしくないという事を聞いてもいました。
もし自分も芋づる式に拘束されるなら夜中の1時以降だと何とか自分なりに隠れる方法を考え続け夜が明けたのを覚えています。

こんな不安が続いていくのかと思うと途方もないプレッシャーがのしかかる事になると思いましたが、不思議と発信を辞めるという選択肢は思い浮かびませんでした。
どうやったら発信を続けられるのかという風にしか思考は働きませんでした。
我ながら強靭なメンタルだったと思います。
仲間が捕まったからこその意地だったのかもしれません。

2007年に軍に殺害された長井さんの事も思い浮かびました。

私は彼らのように危険な現場に飛び込んで行くというような勇気はありません。
軍が自分のような小物に目を付けると思わないという側面もあります。
しかし、長井さんの事件のようにどこまでも強引に自分たちの罪を認めようとしない組織ではあります。
最悪の最悪の事態を考えたら、拘束や殺害など表に出る事はなく人知れず消されてしまうのではないか。
世間には行方不明などというニュースだけが流れるのではないか。

映画プロデューサーでもある想像力豊かな自分がこんな時には自分自身の恐怖を更に煽る形で働いてしまうのを恨めしくも思いました。
今はあの時程の脅威を感じる日々ではありません。
しかし、発信を続ける限り様々なリスクは確実にあります。
そもそもミャンマーで生活する事も大きなリスクであるという事は伝え続けていかないといけないと感じています。

私の想像はただの妄想で笑い話のように書きましたが、事実、近しい友人である北角氏は不当に拘束されました。
更に友人である日本永住資格を持つマウンティンダン氏は未だにインセイン収容所に拘束されたままです。
実に1年半以上になります。

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ミュージシャン、映像監督でもある長年来の友人Htam Hkayは今年の1月に指名手配されてしまい、潜伏生活を余儀なくされています。
※昨日の記事でもこのことは触れています。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/shimmachi/2022/12/post-94.php

このような事が起こるミャンマーで今自分がしている事はしょせん国を乗っ取ろうとしている存在からは取るに足りない存在なのか、それともただ泳がされているだけなのか。
自分の身に何かが起こるのかもしれないという不安と、自分がしている事は果たして正しい事なのかという葛藤は消えることはありません。

それでもやはり発信を続けようという気持ちは変わらないし、ミャンマーからエンターテインメントを世界に届けるんだという気持ちはむしろ強くなるばかりです。

2022年は初めて年初から年末まで一年を通してこのWorld Voiceに連載する経験をいただきました。
世界中の日本人がそれぞれのバックボーンを基に様々な国の情報を発信するというこのプラットフォームでミャンマーから発信できることを嬉しく思います。
改めて担当の方を含め、スタッフや関係者の皆様へ感謝の意を表したいと思います。

来年は更に多くの人にミャンマーの事を知っていただけるように精進していきたいと思います。
私の本分であるエンタメは勿論、ビジネスや、政治など様々な事で動く準備があります。
日本に向けて、世界に向けてミャンマーの事を伝えていくべく引き続き頑張って参りますのでどうかよろしくお願い致します。

本当に取り留めない文章になってしまいましたが、今の率直な気持ちを皆さんにお伝えしました。
皆さまどうか良いお年を。

それではまた、来年。

 

Profile

著者プロフィール
新町智哉

映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。

Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan

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