南米街角クラブ
ベネズエラ映画「Pelo Malo」(縮れ毛)から考える3つのキーワード
期限切れのワクチン接種、政府によるワクチン購入不正の噂も飛び交うブラジルだが、7月9日現在、国全体の接種率は2回接種済みが14%、1回接種済みが39.6%となり、新規感染者数もようやく下降し始めた。
特にサンパウロ州では年齢別接種プランもスピードアップしており、今週末には38歳以上の居住者が接種可能となっている。
各会場でその日に余ったワクチンを接種できるXepa(シェパ)と呼ばれる制度もあり、友人は3~4回会場に出向いてプラン前に接種することができた。
しかしながら、新たな変異株への有効性や海外渡航条件などを理由にワクチン選びも起こっているようで、サンパウロ市近郊の町では「希望通りのワクチンメーカーでないという理由で当日接種を拒否した場合、年齢別プランが全て終了するまで接種権なしとする」と取り決めがあった。
予定通りであれば、私も今月中には1回目のワクチン接種が出来るだろう。
接種できたとしてもステイホームはまだまだ続きそうなので、先月から週1本ずつ南米の映画を見ることにした。
残念ながら南米映画は日本であまり馴染みがないかもしれない。
おそらくこれまで大きく話題になった作品といえばブラジルの『シティ・オブ・ゴッド』、最近なら『バクラウ』だろう。
私自身、評論するにはまだまだ及ばぬ数しか視聴していないが、とても考えさせられた作品がある。
基本的にブラジルのことを中心に書いてきたが、"南米"という視点で見るとブラジルと共通する点が沢山あるので紹介したい。
|ベネズエラの監督マリアナ・ロンドンによる『Pelo Malo』(2013)
(Photo by Adorocinema)
舞台は簡素な集合住宅が並ぶベネズエラの大街区。
母親と生まれたばかりの弟と共に暮らす9歳の少年ジュニオールを中心に社会的背景を盛り込んだ大変興味深い作品だ。
夏休み明けに学校に提出するための証明写真を撮影するために、自身の縮れ毛を歌手のようなストレートヘアにしたいと母親に告げたジュニオール。
警備員の職を失い経済的困難な状態の家庭を守る母親は、ストレートヘアの歌手に憧れるジュニオールにとある疑問を抱き始める。
ジュニオールは祖母に想いを伝えると、孫の願いを叶えてあげたいとドライヤーで髪を伸ばし、アイドル歌手のような衣装を作ってあげると約束する。そして、歌手になりきるために歌の練習をするように勧めた。
息子に対する不信感が増していった母親は、彼を病院に連れていき、「髪をストレートにしたいと言っている」「歌を歌い始めた」「近所の商店で働く青年に憧れを抱いている」そして「息子はゲイなのではないか」と医者に問いただす。
医者に父親がいないことを指摘され、男らしさの見本を見せる必要があると言われた母親は、元勤務先の上司を自宅に招き、わざと息子に見えるようにセックスするという大胆な行動にも及んだ。
そんな母親の願いを受け入れるべきかと考え始めたのか、ジュニオールは祖母がせっかく作った歌手の衣装を「いらない」と言い始める。
この映画を通して私自身が感じた3つの重要なキーワードをまとめてみた。
著者プロフィール
- 島田愛加
音楽家。ボサノヴァに心奪われ2014年よりサンパウロ州在住。同州立タトゥイ音楽院ブラジル音楽/Jazz科卒業。在学中に出会った南米各国からの留学生の影響で、今ではすっかり南米の虜に。ブラジルを中心に街角で起こっている出来事をありのままにお伝えします。2020年1月から11月までプロジェクトのためペルー共和国の首都リマに滞在。
Webサイト:https://lit.link/aikashimada
Twitter: @aika_shimada