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パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです

RIKAママ|フランス

ヨーロッパ感染再拡大で見えるフランスのヘルスパスの整合性

ヨーロッパを襲う急激な感染再拡大の波  イメージ  pixabay 画像

WHO(世界保健機構)が、現在のヨーロッパでのコロナウィルスの急激な感染再拡大から、「ヨーロッパ地域53ヶ国における現在の感染率の上昇は、大きな懸念事項であり、ヨーロッパが再び感染再拡大の震源地となる可能性、このままでは2022年2月までに、ヨーロッパで、さらに50万人を超える犠牲者が出る可能性がある」と警鐘を鳴らす発表をしたのは11月初旬のことでした。

WHOはさらにこの状況の緊急性について、世界で2ヶ月ぶりにコロナウィルスの症例と死亡者数が世界で約2ヶ月ぶりに増加しているのは、他の地域の国々での感染減少傾向を上回るヨーロッパでの急激な増加によるものと言及しています。ヨーロッパではほぼ7週間連続で感染は増加を続けており、1日あたりの死亡者数も8週間連続で増加しています。

この発表があった時点では、感染再拡大は主に東欧やロシアを中心とする地域であったにも関わらず、着実に感染拡大の波は西欧にまで及び始めました。

中でも、これまでヨーロッパの中では常に優等生的存在であったドイツで、パンデミックが始まって以来の最高の1日の新規感染者数(1日あたり5万件以上)を記録したニュースはフランスでも衝撃的に取り上げられています。

ECDC(欧州疾病予防管理センター)が発表した最も懸念される10ヶ国

この現在のヨーロッパでの感染再拡大の波を受けて、ストックホルムを拠点とするECDC(欧州疾病予防管理センター)は、27の欧州加盟国の中で、ベルギー、ポーランド、オランダ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、スロベニアなどの10ヶ国をさらなる感染拡大による被害が最も懸念される国として発表しました。これは、現在の感染率とともに、ワクチン接種率、リスクの高い高齢者や既往症を抱える人々の人口の割合、医療体制などから換算されています。

しかし、実際に、危険な状況にあるのは、ここに挙げられた国々に限ったことではなく、毎日のように、周囲のヨーロッパの国々では着実に感染者が増加し、それぞれに新たな感染対策の措置を講じ始めています。

欧州各国が乗り出した感染拡大に対する措置 部分的ロックダウンとワクチン未接種者のみのロックダウン

まず、この10ヶ国の中に指定はされなかったものの、1日の新規感染者が5万人を突破するというパンデミック以来の記録的な数字を出したドイツでは、政府が「パンデミックは再び劇的に広がっている」とし、特に影響を受けたいくつかの地域でワクチン未接種の人々を対象とした新たな対策を講じることを発表しています。10月以来のドイツのこの感染増加の変化は顕著であり、特にザクセン州、バイエルン州、ベルリンなどの地域では著しく影響が出ています。

これを受けて、ベルリンはワクチン未接種の人々がテラス席のないレストラン、バー、スポーツホール、美容院へアクセスすることを禁止しました。ワクチン接種済みであるか、感染から回復したことを証明できない場合、これらの公共の場所へのアクセスは許可されなくなりました。そして、ワクチン接種や回復期の状態に関係なく週に少なくとも1回の迅速なコロナ検査を無料で行うことができるようになり、検査の証明書が特定の屋内空間やイベントにアクセスするための証明書としても使用できるようになりました。

現在のドイツでの感染急拡大は、意外にもドイツのワクチン接種率(67.4%)が比較的低いことにも起因していると言われています。特に、ワクチン接種率が最も低いザクセン州(ワクチン接種率57%)は、国内で最も高い感染発生率を記録し、10万人中 483.7人という高い陽性率を記録しています。この数字はワクチン接種率の有効性を物語っています。

オーストリアでは、すでに感染率が最も高いオーバーエスターライヒ州とザルツブルクでは決定されているワクチン未接種者対象のロックダウン措置を全国規模に拡大するとともに、医療従事者の強制ワクチン接種の措置がとられることになりました。ワクチン未接種者だけのロックダウンというのもなかなか強烈な緊急措置です。オーストリアもまた、欧州全体のワクチン接種率を下回るワクチン接種率(64%)で、オーストリアのアレクサンダー・シャレンバーグ首相は、「これは恥ずべきほどに低い数字である」と語り、ワクチン接種を呼びかけています。

また、オランダは、ドイツ同様、昨年の12月の新規感染者数(12,997件)を上回る数字(16,364件)を記録し、この感染急増に直面したオランダ政府は、レストラン・バー、スーパーマーケット等(生活必需品を扱う店舗)の営業は午後8時まで、否必需品を扱う店舗の営業は午後6時までとし、可能な限り自宅に4人以上を収容せず、在宅勤務をするように求める「部分的ロックダウン」(学校は閉鎖せずに、通常の外出は許可)の措置を3週間の予定で、急遽、開始しています。オランダは、この3週間の間に、食事及びレジャー施設へのアクセスを「ワクチン接種済みの人々には制限しない状態」にできるよう準備をするものとみられます。

しかし、解せないのは、オランダのワクチン接種率は82%と比較的高く、それでも感染拡大を避けきれなかったということです。オランダでは、それでも感染を避けきれずにこのような部分的ロックダウン措置を取らざるを得なくなってしまったことに対する反発の声も早くも上がり始めているようです。オランダの状況を見る限り、ワクチン接種だけでは感染回避は十分ではなく、特に感染リスクが高いと考えられている屋内の密集した空間やレストランなどの飲食の場などの空間での感染対策、人員制限(ワクチン未接種者の入場制限等)は必須であると思われます。

また、これらのヨーロッパでの感染拡大再開に直面し、ノルウェーは自治体レベルでヘルスパスの使用を許可することにより、新たな制限を再導入することを発表しています。また、9月末にすべての制限を解除したスカンジナビアの国はまた、18歳以上に3回目の投与を提供する予定であることが発表されています。

フランスのヘルスパスの整合性

このようなヨーロッパの感染再拡大の中、フランスとて例外ではなく、10月までは1日の新規感染者数も5,000人前後でとどまっていたものが、10月半ば過ぎ頃から、徐々に増加し始め、6,000〜8,000〜9,000とみるみる増加し、ついには14,000人を突破しています。フランスは昨年の状況が酷すぎたこともあるのですが、それでも、今のところ、昨年以上の記録を塗り替えることはなく、「第5波が始まった!」とは、言っていますが、周囲の国々に比べるとその上昇の具合は、比較的、穏やか?で集中治療室の患者数なども急増はしていません。

なんといっても、現在のヨーロッパでの感染急拡大に直面して、周囲のヨーロッパの国々が急遽取り始めた部分的ロックダウンやワクチン未接種者限定のロックダウンは、フランスが7月の段階で開始したヘルスパスのシステムのようなもので、フランスのヘルスパスはレストラン・カフェなどの飲食店、屋内の娯楽施設や文化施設、スポーツジムなど感染のリスクが高い場所でのワクチン未接種者への逆ロックダウンのようなものです。

あらためて、このヨーロッパの感染再拡大に直面し、ヘルスパスを起用することにより、ワクチン接種率を上昇させ、また日常生活においての感染リスクの高い場所への入場をヘルスパスで制限することで感染から守る役割を果たしているヘルスパスは非常によくできていたものだと感心します。もしも、このヘルスパスがなければ、やたらと「自由」や「権利」を主張するフランス人にこれだけワクチン接種を浸透させることはできなかったと思われると共に、これにより、ヘルスパスさえあれば、日常生活を普通に送ることができることを納得させてしまったのです。オランダの例からもわかるように、ワクチン接種だけでは、完璧な感染対策にはならないのです。

現在、オーストリアが検討している医療従事者の強制ワクチン接種もフランスでは9月から開始されています。

このヘルスパスのシステムが発表された今年の7月の時点では、かなり強行で強引な手段だと衝撃的ではありましたが、結果的に現在のヨーロッパの感染急拡大とそれに対する対応を見ていると、フランスのヘルスパスのシステムは正しい選択であったと思わざるを得ません。しかし、このヘルスパスの導入により、ワクチン接種率が上昇したとはいえ、現在のフランスのワクチン接種率はまだまだ十分ではないことから、現在、感染が増加している状況が生まれているのです。

このヨーロッパ全体、そして、フランスの感染増加に伴い、マクロン大統領は、ワクチン接種の効果が減少しはじめると考えられる2回目のワクチン接種から6ヶ月後のワクチン接種を呼びかけ、とりあえずリスクが高く、初期にワクチン接種を開始している65歳以上の人に対しては、3回目のワクチン接種を受けない場合は、12月15日以降は、それまでのヘルスパスが無効になること、50歳以上の3回目のワクチン接種も12月から開始することを発表しています。実にこのマクロン大統領の演説の効果は絶大なもので、マクロン大統領が数日後に演説をするというその予告だけで、ワクチン接種の予約が急増し、演説の直後1時間以内に10万件以上の予約が入るという結果をもたらしています。

私も心臓疾患を抱えている身で、リスクが高いと分類されているゆえ、3回目のワクチン接種の予約を完了しました。これから一層、気温も下がり、ノエルや年末年始といった感染のリスクの高い行事が待ち受けている今、ヘルスパスである程度、守られているとはいえ、決して安心できる状況ではありません。

7月の段階でのヘルスパス起用の発表は衝撃的ではありましたが、振り返ってみれば、もし、フランスがこれを導入していなかったらと思うと想像するだけでも恐ろしい結果になっていたことは明白です。

そこへいくと、日本にはヘルスパスといった国が取り締まる厳しい規制もなく、ワクチン接種も遅れて始まったにも関わらず、あっという間にヨーロッパを追い越すワクチン接種率、また高齢者が多いリスクの高い国でありながら、感染を抑えているのは奇跡的なことで、つくづく日本はすごいなと思うのです。

 

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著者プロフィール
RIKAママ

フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。

ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」

Twitter:@OoieR



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