パリのカフェのテラスから〜 フランスって、ホントはこんなところです
フランスのコロナウィルス感染第二波が来るのは当然だった・・・・
フランスの感染第二波はとっくに始まっていた
はっきりいって、フランスにコロナウィルスの第二波が来るのは当然の結果でした。実のところ、フランスにコロナウィルス感染の第二波が来ている・・・・のは、もうずっと前からのような気がします。9月2週目には1日の感染者は1万人を突破し、それから13000人、16000人とぐんぐんと増えるともう何人になっても驚かないぞと思っていたら、10月には、26000人、ついには、3万人を突破する日まで出てきて、やっぱりその度に、思わず息を呑むような驚きに襲われます。ですから、その波が高くなり続けていることは事実で、しかも、さすがにそれだけ感染者がいれば、おのずと無症状の人ばかりではなく、病院もひっ迫状態に向けて、まっしぐらです。
コロナウィルスの第一波がロックダウンされた3月から5月までとするなら、私が思うに第二波は、8月に入った頃からだったと思います。8月の初旬には、一日の感染者数2000人、翌週には3000人、月末には6000人とぐんぐん感染者が増えていったのです。なので、ロックダウンにより、コロナウィルス感染がどうにか少し、おさまっていたのは、約2ヶ月間だけということになります。
たまたま、私は、今年、2月に日本に一時帰国しており、その頃は、日本でのダイヤモンドプリンセスでの感染拡大が世界的なニュースになっており、ヨーロッパでは、感染の兆候は発表されてはおらず、日本からフランスに帰国する際に、フランスに入国させてもらえるかを心配していたくらいでした。その頃は、アジア人がコロナウィルス扱いされて、罵倒されたり、差別されたりする問題も勃発していました。しかし、入国審査の際は、コロナウィルスについてのチェックなどは、皆無で、入国は、何ら問題は、ありませんでした。しかし、実際のところは、私が日本から帰国した2月末の時点では、パリの病院では、異常事態が起こり始めていたのです。しかし、その後も長いことフランスは、海外からの入国のチェックを行なっていませんでした。この対応の緩さ、甘さも信じ難いほどです。
後になってからの調査によると、フランスの最初のコロナウィルス感染患者と見られる人は、昨年の12月の段階で、存在していて、当時は、原因不明の病気として片付けられていたのです。
フランス人ってどうしようもない・・・・が、そのまま感染拡大に反映
フランスで暮らしていると、デモやストライキ、テロなど「フランス人ってどうしようもないな・・・・」と思うことは、山ほどあるのですが、今回のコロナウィルス感染拡大に関しては、ことさら、その「どうしようもない感」が、この感染拡大にそのまま反映しています。
まず、多くの場で語られていることですが、フランス人の生活習慣が、ことごとくコロナウィルス感染に適した?ものであり、ハグやビズー(頰と頰と合わせてチュッチュっと挨拶する)や握手などのスキンシップの多いこと、不衛生なこと(手を洗わない、あまりお風呂に入らない、外履きのまま家に上がる、地べたに座り込む・・・・などなど)、マスクを忌み嫌うこと、人と戯れるのが好きなこと、バカンス好きなこと、ルールを守らないこと・・・・などなど、彼らの日常生活の様子をコロナウィルス感染の視点からチェックしたら、のきなみダメなことの連続で突っ込みどころが満載になります。
今さらのように政府からの呼びかけのテレビコマーシャルなどでは、ビズーやハグ、握手はやめ、人との距離を取りましょう、手を洗いましょう、さらには、一回使ったティッシュは捨てましょう・・・・などと呼びかけているのには、日頃の衛生観念とモラルの低さを感じさせます。「一回使ったティッシュは捨てる・・・・」ってどういうこと?と普通の日本人なら誰でもが思うでしょう。そんなことは、誰も注意しなくても、日本だったら、誰も使いません。ところがフランス人は、一度使ったテイッシュをポケットにしまい、何度か同じティッシュを使う人が少なくないのです。同じティッシュを何度も使う・・・・そんな不衛生な人で溢れているのです・・・・フランスという国は・・・・。
それに加えて、今回ほど、フランス人がラテン系であることを感じさせられたことはありません。日頃から、デモやストライキで自己主張が激しく、感情を激昂させることが多い国民だと思っていましたが、まあ隙をついては、人々が集まり、歌い、踊り騒ぐという場面をどれだけ見たことでしょうか? また、この自己主張の強さも裏目に出て、コロナ禍中の様々な新しいルールが求められるたびに大騒ぎ、マスクの義務化一つをとっても大変な騒ぎになりました。マスクをしていないことを乗客に注意したバスの運転手がその場でバスを引きずり降ろされて殺されるという事件もありました。
サッカーの試合などへの熱狂ぶりなども、とても日本人の理解の及ぶ騒ぎ方ではありません。
そもそもルールや規則といったものにおとなしく従う人々ではなく、罰則、罰金がなければ、ルールなどあって無きの如し、ロックダウンの際などは、警察、軍隊までもが出動する物々しいものになりました。
フランスでは、テロの後などは、結構見かけますが、長い銃を肩にかけた軍隊の人が街を練り歩き、病院への物資を運ぶために軍用車が街を行き来する様子は、いみじくも、マクロン大統領がロックダウンの際に使った「我々は戦争状態にある・・・・」といった言葉そのものに感じられました。
フランス人のバカンス好きが感染拡大に拍車をかけた
その上、このフランスのコロナウィルス感染の第二波に拍車をかけたのは、フランス人が何よりも大切にしているバカンスです。フランス人はバカンスのために生きているといっても過言ではありません。そんな国民感情からも、経済復興からも、はなから政府には、バカンスを禁止する頭はなかったようで、さすがに海外移動を避ける人が多かったものの、逆にフランス国内で皆、バカンスに出かけ、国内中にコロナウィルス感染が蔓延しました。第一波の時には、数カ所の局地的な感染拡大でしたが、今回は、バカンスのためにより広範囲に広がっているだけ、より始末に負えない状態です。
ロックダウン解除時には、まだまだ国民の危機意識も強く、子供の学校再開でさえも、反対する親が多いくらいだったのに、実際のところ、学校が少しずつ再開されても、すぐに夏のバカンスの時期に突入し、世間はバカンスモード一色になり、バカンスでの開放感と同時にコロナへの危機感も吹っ飛び、吹っ飛んだどころか、これまでロックダウンにより鬱屈していたものを一気に爆発させるようなムードになりました。
こうして振り返ってみると、フランス政府が失敗したと思われる点は少なくなく、当初のロックダウン時も国民のショックを考えて?段階的なものとし、ロックダウン寸前までは統一地方選挙も黄色いベスト運動のデモまでもが行われていました。その数日間でいったいどれだけの感染を広げてしまったのかわかりません。
そして、これだけバカンスバカンスと緩んでしまう国民を持つ国ならば、最初のロックダウン解除の際、まだ、国民が危機意識に震えていた段階で、マスクは義務化し、レストランなどでの衛生管理に必要な感染者追跡のためのルールを厳しく制定し、感染者の隔離を徹底しておくべきでした。一度、緩んでしまった国民の危機意識を元に戻すのは容易なことではありません。現在は、21時以降の外出が禁止され、夜間のロックダウン状態になっているパリですが、驚くことに、今でさえも、検査をして陽性になった人でも、マスクさえしていれば、外出してもいいなどと言われ、隔離状態にはなっていないのです。ホントにどこまで甘々なのか・・・・と思います。これでは検査をする意味がありません。ザルです。もとより、2ヶ月近いロックダウンで、押さえつけられることにウンザリしているフランス人です。モラルも何もあったものではありません。
また、例年、5月末から6月にかけて行われるテニスのローランギャロス(全仏オープン)や7月に行われるはずのツールドフランス(フランス全国にわたる自転車ロードレース)は、それぞれ延期されたものの、結果的に、その時点よりもさらに感染状態の悪化した9月、10月に行うことになってしまったのも、バカンス後に感染が広がるであろうことや気温が低下することから、秋には感染悪化が叫ばれていたにも関わらず、結果的には、最悪な状態での開催となりました。ことごとく、取っている措置が裏目に出ています。
その上、プライドの高いフランスは、特にヨーロッパの中でもフランスが最悪の状況であることを認めたがらず、自画自賛は得意でも、反省は苦手です。ロックダウン解除時に行ったマクロン大統領の「俺たちはよくやった宣言」にもいかにもフランスらしさを感じましたし、つい最近、夜間外出禁止の発表でも、ヨーロッパ全体が感染状況が深刻な状況を迎えているとし、よりによって、感染回避に一番、成功しているドイツを引き合いに出して、ドイツも厳しい警戒体制を敷き始めたなどと説明しています。
しかし、フランスがヨーロッパの中でも群を抜いて感染状態が悪化していることは周知の事実、この危機的状況をなぜ国民にきちんと訴えないのか?負けず嫌いで、ヨーロッパ全体が・・・・などとフランスの最悪の状態をぼんやりとさせるような伝え方には、疑問を感じずにいられません。
その上、現在、フランスは、トゥーサン(諸聖人の祝日)のバカンスの最中、パリやイルドフランスなどの感染の悪化している地域では、夜間のロックダウン状態になっているというのに、またここでもあくまでもバカンスを尊重するフランスは、バカンス期間中の移動制限なし、節度を持って行動してほしいなどと言っています。はっきり言って、フランス人に節度などというものは存在しません。いい加減、フランス人を甘く見ているのか、マクロン大統領の真意を図りかねます。
21時以降に外出できなければ、外出ができる地域に移動するか、もしくは家族や友人と家に集まって騒ぐのです。現に、我が家のアパートの上の階など、夜になると人が集まっている声がガヤガヤと聞こえてきます。家族同士、友人同士なら大丈夫と思っている人が多いのです。まさに、トゥーサンのバカンスは、家族で集まってお墓参りをしたりする行事なのです。夏のバカンスで大失敗している上に、まだバカンスを尊重するフランス人の甘さは、今後、さらに深刻な状況を招くことでしょう。
コロナウィルス感染にヨーロッパの気候が適している
10月に入ってからは、フランスだけでなく、ヨーロッパ全体でコロナウィルスの感染拡大は広がっています。私は、これには、ヨーロッパの気候が大きく影響していると思っています。気温が下がり、空気が乾燥している状態・・・・これは、第一波の時に、多くの食肉処理工場でクラスターが発生したことからも証明されています。要は、今、ヨーロッパの気候は食肉処理工場の中のような状態に近づいているのです。ウィルスはある程度、季節性の性質を持っており、高温多湿の状態では、感染は広がりづらいのです。ですから、感染症の専門家などは、夏になれば、コロナウィルスの感染はおさまるだろうと予言していました。事実、そのとおりに、一時は、感染はおさまりかけたかに見えたのです。
しかし、結局のところ、感染がおさまりきらないまま、人々はバカンスに出て、ウィルスをしっかり全国的に流通させ、十分な下地を作ってから、気温が下がる秋を迎えたのですから、第二波が始まるのも当然のことです。
フランスは、是が非でも、前回のようなロックダウンはしないつもりのようです。これからさらに気温は下がり、インフルエンザの流行が重なることも心配され、私のところにもインフルエンザのワクチンの招待状が届きました。この招待状で、インフルエンザのワクチンは無料で受けることができます。高齢の方などは特に、例年はワクチンを受けない人もこぞってワクチンを受けるために薬局に行列ができています。
コロナウィルスの感染が始まって以来、フランスの動きを振り返ってみると、第二波が来るのは当然だったと思っています。この第二波が来て、夜間ロックダウンが行われる状況の中、先日は、表現の自由を担当していた中学の教師が路上で首を掻き切られて殺されるというテロ事件が起こり、フランス中がコロナウィルスそっちのけで騒然となっています。昨夜は被害者となった教師の国葬がパリ・ソルボンヌ大学で大々的に行われました。コロナウィルス以外の問題も次から次へと起こるフランスです。
周りの人が衛生管理を尊重しない以上、自分なりの精一杯のセルフロックダウンをしなければ、生き残れない・・・・もうパリではコロナウィルスに感染しても、病院のベッドは足りなくなっているかもしれないのです。
フランスのコロナウィルスによる死者はこれまでに34048人、ここ数日、一日150人前後が亡くなっています。
著者プロフィール
- RIKAママ
フランスって、どうしようもない・・と、日々感じながら、どこかに魅力も感じつつ生活している日本人女性。日本で約10年、フランスで17年勤務の後、現在フリー。フランス人とのハーフの娘(1人)を持つママ。東京都出身。
ブログ:「海外で暮らしてみれば・・」
Twitter:@OoieR