ルワンダのカリツィエから見る日々のあれこれ
ルワンダのダンサーとして生きていくということ。
前回はアフリカをルーツとし、アフリカのストリートダンスに当たるアフロダンスについての話をしたが、今日はそこからここルワンダのダンスシーン、またダンサーたちの現状について話したいと思う。
600万人を超えるダンス人口を持つダンス大国日本でさえも、ダンサーという職業一本で生活していくことがまだ難しいと言われる中、アフリカの人口1200万人ほどの小国、ルワンダのダンサーたちはどのようにダンスを職業として生計を立てているのだろうか。
アフリカ人というと音楽や踊りが好きで、日常的にダンスが身近にあるというようなイメージが湧くのではないか。実際にも、本当にその通りで、踊りが上手い・下手、できる・できないということは関係なしにして、音楽がどこへいっても至る所で流れているし、それに自然とのって踊りだしたり、歌いだすことが本当に日常の出来事であったりする。そう考えると、じゃあそんなみんなが大好きなダンス業界には価値が置かれているんではないかと思いがちだが、実際のところはそれとこれとは話が別である。
ルワンダでも職業としてダンサーという仕事が一般の人から認められたり、理解を得ているかと言われると、まだまだそのレベルには程遠いと言えるだろう。日本であれば少なくとも、十分な設備が整っているダンススタジオが数多くあったり、海外で有名なダンサーのレッスンやワークショップを受け、知識やテクニックをもったダンサーたちがたくさんいて、彼らから教えてもらえる機会がたくさんある。
しかしルワンダのダンスシーンは歴史が浅く、発展途中の段階。もちろんダンススタジオと呼ばれるものはほとんどないし、ダンスレッスンをもつジムが数カ所ある程度。ルワンダのダンス第一世代が今20代後半くらいの人たちだが、彼らが学生の頃にダンサーを目指して練習していた当時の話を聞くと、野外で周りに何もなく踊れるようなスペースのあるような広場にいくために、毎日徒歩で1時間以上もかけて通っていたという。私がここのダンサーに出会った2016年の頃でさえも、練習場所は無料で使用できる地域のユースセンター(児童館)の体育館に平日毎朝ダンサーたちが通って、練習をみんなで行なっていた。またストリートダンスを正しい知識やスキルを持って教えられる人がいないので、彼ら自身でyoutubeや海外の映画などを見て、研究してきたという。
こんなにダンスにまっすぐに向き合って活動をしているダンサーたちだが、彼らの親やコミュニティの人たちのダンスへの理解はただ単にダンスは楽しむためのものであったり、ダンサーはチャラチャラしていて将来に良い影響を与えないというようなネガティブなものが多い。現在はSNSの影響もあり子供達にとってさらにダンスが身近なものとなり、小さい頃からダンスを習ってダンサーを夢見る子達も多いのだが、実際に将来の道を考える時期になるとダンサーという不安定な職業への道を選ぶ人は少ない。
では実際にルワンダのダンサーの収入源は何なのか。
一番安定した収入が得られるのは、ジムのダンスレッスンやユースセンター・学校などでダンスを教える場所をもっている人。この場合基本的には毎月定期的に収入が得られる。ただし前述したが、その機会を得られる人は一握り。
あとは個人でプライベートレッスンを外国人や裕福層の人たち向けに行なっている人。レッスン以外になると歌手のバックダンサーとしてPVの撮影やライブ等のパフォーマンスに参加する。またこれらの振り付けの仕事を受けることも。これらは割と需要があるが、不安定で報酬も少ない。これらが主なものでその他には回数は少ないが、ダンスイベント等の賞金などがある。
これらからわかるように、ダンサー一本で生活していくことはなかなか厳しいのである。
そんな彼らが日々励んでいる活動として自身や所属チームのプロモーション活動がある。イベント自体が少ないので、自分から発信しない限り多くの人に知ってもらうことが難しいので、自分たちでダンス動画を撮影し、それらをSNSに投稿して自分の宣伝を行う。この宣伝が上手い人は企業やエンタメ業界から注目され、そこから仕事へと発展することも多々。以前は自分自身で撮影も行っているダンサーが多かったが、最近は映像のクオリティを高めるために、専門のビデオグラファーに撮影をお願いして行う人が多くなった。
私も所属するダンスチームの一つの活動としてこのプロモーションビデオの作成があり、これまでいくつか撮影に参加してきた。私たちダンサー側は撮影で踊るダンスを準備し、撮影の当日ビデオグラファーと相談してどのようなシーンにするのか、ダンスの前後にちょっとしたストーリーを加えたりなど具体的な内容を決めていく。基本的にはこのビデオグラファーが動画のダイレクターとしての役割も担って、撮影を進め、そのあとの編集も彼らが行う。なのでこのプロモーションビデオに関しては、この撮影の技術もかなり重要となり、最近はこのビデオグラファーの需要が増えている。
このような形で、彼らは収入を得ることが難しい中でもダンサーたち自身でマネージメントやプロモーションを行いながら、一般の人たちにもダンサーへの理解を深めてもらい、またルワンダのダンスシーンを盛り上げていこうと活発に日々活動しているのである。
アフリカのダンサーたちへのイメージが少しは変わっただろうか。こんな彼らのこの先が楽しみであり、私も同じダンサーとして彼らに敬意を示しながら、自分にできるサポートをしていけたらと思う。これらのルワンダダンサーたちを是非チェックしてみてほしい。
著者プロフィール
- 大江里佳
ルワンダキガリ在住。2014年に青年海外協力隊としてルワンダに渡ったことをきっかけに、この土地の人々の生きる力と地域の強い結びつきに惹かれる。帰国後も単独でルワンダに戻り、現地NPO職員を経て、2019年に現地でコンサルタント・現地語通訳等の会社を起業。一方で、現地アフロダンスチームに所属しダンス活動も行う。2018年から同棲を始めたルワンダ人パートナーとの間に子を授かり、2020年に出産。現在家族3人でキガリで暮す。
Webサイト: URUZIGANGO
Twitter: @satoka817