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アルゼンチンと、タンゴな人々

西原なつき|アルゼンチン

インフレ年率100%越え、汚職、失踪、暗殺未遂事件。アルゼンチン波乱の選挙イヤー



アルゼンチンの検察は、2022年、公共事業に関する汚職の罪で禁錮12年を求刑し、その後連邦裁判所から禁錮6年と終身の公職追放を言い渡されています。しかし、副大統領の不逮捕特権があることなどから、拘束はされず、現在も副大統領として引き続き職務についています。

そして、彼女に関しての出来事として記憶に新しいのは、丁度この判決が出るまでの渦中に起きた、「クリスティーナ副大統領暗殺未遂事件」。全国民にとってとても衝撃的な出来事で、翌日はこの事件を受けて、国として特別な休日にすると発表されたことも覚えています。

事件が起きたのは、首都ブエノスアイレスで昨年9月夜。クリスティーナ副大統領が自宅前で、彼女を支持する市民らに囲まれ、挨拶を行っていたところでした。突然群衆の中から男が至近距離で彼女に銃口を向けたのですが、その瞬間に銃が動作不良になり、命を取り留めたのです。
休日となった翌日には、数千人の支持者が首都中心部に集まり、副大統領への支持を表明するとともに、この出来事を強く批判しました。
そしてクリスティーナ副大統領も、今回の大統領選には早々に出馬しない意思を示していました。



波乱の予備選挙スタート

この選挙イヤー、毎回選挙が近づくにつれお互いの足を引っ張りあうようなことや様々な事件が起こり、選挙に影響を与えます。先駆けて今月18日にチャコ州というところで予備選挙が行われたのですが、その結果に関しても、とある事件の影響が大きく出た形となりました。

今月18日、チャコでのPASOの結果が発表され、2007年から現在まで長い間チャコ州の知事をつとめてきたホルヘ・カピタニッチ知事を、野党候補者が圧倒しました。得票率は野党候補者総数が42.66%に対し、カピタニッチは36.83%に留まりました。

信頼は大きかったであろう現職の知事が大きく差をつけられてしまったのには、とある女性の失踪事件が関係しています。

チャコ州の28歳の女性が先日失踪し、殺人事件として現在捜査中なのですが、容疑者として家宅捜索などされている人物が、この女性の10歳年下の夫とその家族。そして、この家族は、先述の、チャコで最も影響力のある、ホルヘ・カピタニッチ州知事と密接な関係にあった、というのです。最新情報では女性の首元の骨だけ発見されたということで、残忍なバラバラ殺人事件としてニュースでも大きく取り上げられています。

この州の平均投票率はおよそ70%から75%程度なのですが、今回の予備選挙の投票率は58%、そのうち白票が8%。女性を対象にした殺人事件「フェミサイド」は国中で大きく問題視されており、この事件への州民の遺憾が強く反映された結果となったのではないかと思います。

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(Photo: istock)

大統領選の予備選挙は8月に行われます。
6月24日に、全党からの大統領・副大統領候補者が出揃ったところですが、早速候補者確定に関して各党内部で揉め事も起きているようで、どこも足並みは揃っていないようです。



 

Profile

著者プロフィール
西原なつき

バンドネオン奏者。"悪魔の楽器"と呼ばれるその独特の音色に、雷に打たれたような衝撃を受け22歳で楽器を始める。2年後の2014年よりブエノスアイレス在住。同市立タンゴ学校オーケストラを卒業後、タンゴショーや様々なプロジェクトでの演奏、また作編曲家としても活動する。現地でも珍しいバンドネオン弾き語りにも挑戦するなど、アルゼンチンタンゴの真髄に近づくべく、修行中。

Webサイト:Mi bandoneon y yo

Instagram :@natsuki_nishihara

Twitter:@bandoneona

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