シリコンバレーと起業家
シリコンバレーに日本人起業家が増えてきた
──最近シリコンバレーで起業する日本人が増えてきているように感じるのですが、実際どうなんでしょうか。(聞き手:小林 大河)
内藤:めちゃくちゃ増えてきてるわけではないですが、昔に比べたら徐々に増えてきたかなと感じます。特に20代後半など、自分と近い世代の人が増えてきました。私がシリコンバレーに引っ越してきたのは5、6年前ですが、その時は同世代はおらず、年上の方ばかりで、起業するにしても何から手をつけて良いか分からない状態でした。先輩の起業家のキヨさん(Chomp CEO 小林清剛さん)も、近いタイミングでベイエリアに引っ越されていました。
私は大学卒業の直前でシリコンバレーに来て、キヨさんは日本で一度エグジット(会社を売却)してから、ベイエリアで次の会社をやるために移住してきました。キヨさんはとても面倒見がよく、私と同い年で、現在Ramen Heroというラーメンのミールキットを販売する事業をやっている長谷川浩之、カプセルホテルの事業をやっていた田中優祐、Zypsyというデザインスタジオの事業をしている玉井和佐、クローズドのコミュニケーションアプリを作っているWaffleの哘崎悟、などもキヨさんにいろいろお世話になりながら、こちらでスタートアップをしています。
我々の経験を通じて、だいたいシリコンバレーで起業をして資金調達するところまでは体系化できてきたので、シリコンバレーやサンフランシスコで起業したいという人には、参考にしてもらえるんじゃないかなと思います。シリコンバレーに来る人は、とりあえずシリコンバレーの空気を吸いにきましたという人が多いんですが、そういう人たちは大体数週間から長くて1ヶ月くらいしか滞在しません。
語学学校に通うとか、Bビザ(ビジネス用の観光ビザ)を取れば半年くらい居れますので、それらを使ってサンフランシスコやシリコンバレーに長く滞在しながら、取り組む課題を発見することが大事だと思います。(資金調達の意味で言えば)こちらである程度の信用がないと、米国の投資家からいきなり資金調達というのは難しいと思います。
シリコンバレーに長期滞在して、取り組む事業が決まったら、まずは日本から数千万円調達して、プロダクトを作り込んでいく。日本人の起業家は日本から資金調達ができたら、E2ビザ(投資家ビザ)を取る人が多いです。それがあると最大で5年間は米国に居れるので、その間に事業を成長させて、次の資金調達に動く。米国での資金調達は、弊社Anyplaceが入ったLAUNCH(ジェイソン・カラカニス氏が創業したアクセラレーター)や、長谷川のAngelPad(トーマス・コルテ氏が創業)など、そのようなアクセラレーターがたくさんあり、インターナショナルなファウンダーを受け入れようという空気もあります。
それらのアクセラレーターに入ることで、米国の投資家からすると、現地のアクセラレーターに入れるだけの実力はあるのだという信用が生まれるので、怪しさが減り、米国での資金調達がしやすくなります。米国のアクセラレーターは、以前に比べると入りやすくなっていると感じます。Y Combinatorも今では1つのバッチで100社以上採用しています。あまり知られていませんが、YCに入った2人目の日本人起業家(アルパカ社)や、最近だとRemotehour(山田俊輔氏が創業)はLAUNCHに入りました。日本人にもチャンスは多くありますし、米国で起業しやすくなってきていると感じます。まずは日本から調達して、現地でプロダクトを作り、米国のアクセラレーターを卒業して、数百万ドル(数億円)調達する。そういう流れが体系化されてきています。
著者プロフィール
- 内藤聡
Anyplace共同創業者兼CEO。大学卒業後に渡米。サンフランシスコで、いくつかの事業に失敗後、ホテル賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。ウーバーの初期投資家であるジェイソン・カラカニス氏から投資を受ける。ブログ『シリコンバレーからよろしく』。@sili_yoro