農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり
オランダ在住、日本人留学生の師走
オランダには12月になると、シンタクラースがやってくる。言い間違いではない、サンタクロースではなくてシンタクラース。実際は11月には既に、船でスペインから従者と到着しているらしい。白馬にまたがり、良い子たちにはお菓子や贈り物を配る。12月6日がシンタクラースの日。前夜には、人々が贈り物を交換し合う。
今年は、家に迎えていい訪問者の数や集会が制限されていたため、郵送で贈り物を送る人が多かった模様である。シンタクラースと何の関係もなしに、この祝日の存在さえも忘れかけていた私は、11月の下旬にネットで本を注文をした。普段なら1,2日で届くところが一週間たっても届かなかったのは、こういう訳だったのか。
ちなみに、オランダの現状の規制は厳しいロックダウン状態。外出はできるだけ控えること。一日に訪問者は2人まで。24から26日の3日間は上限が3人になるとか。生活必需品を売る店以外は閉まっていて、飲食店も宅配・テイクアウトでどうにかしのいでいる状況。
今年はこんな具合だが、ここ2年間、オランダの12月を留学生の私がどのように過ごしてきたのかを思い出してみた。
ビールの水溜まりに泣かされた12月
オランダで過ごす初めての12月、友達が舵を取って、シンタクラース・パーティーを企画してくれた。それぞれが一品持ち寄って華やかな夕飯。1つは当たり、残り2つはハズレ、計3つのプレゼント持ち寄って囲んで座り、シンタクラース仕様のサイコロを振り、プレゼント交換をした。
確か私は、コーンフラワーと、メモ帳と、空気枕(飛行機に持ち込むようなもの)を貰ったっけ。
話を移すと、実は私は、国際交流を一つの軸とした学生団体の役員を務めている。その学生団体で、初のクリスマス舞踏会を企画したのも2018年の冬。大学の礼拝堂を装飾し、DJを一晩雇い、記念撮影のブースも設け、別の学生団体に飲み物のスタンドを仕切ってもらい...なんと200人強が集まった。
オランダの若者のパーティーは凄い。何が凄いかって、アルコールの取り扱い方:プラカップは床へポイ捨て、時にはビールが入ったまま。夜の終わりに酔い潰れ寸前の人々は、時間になってもなかなか帰ってくれない。「パリピ」ではない私には、地獄絵だ。
やっと皆が会場から出て、礼拝堂の床に目線を向けると、ビールの大きな水溜まりが見えて絶望した。1、2時間かけて、深夜2時近くまで掃除したが、ほうきと塵取りでやるには限界がある。掃除担当のおばさんごめんなさいという思いと、ビールの臭いを家に持ち帰った。
その翌年、同じようにクリスマス舞踏会を企画した。同じようにビールの水溜まりとその掃除に吐き気がしたのは、いい思い出...では全くない。
ドイツのクリスマスマーケットへ
さらに話を移すと、ドイツ・ケルンのクリスマスマーケットへのバス遠足も学生団体で企画した。ドイツとオランダはお隣同士で、かつケルンはオランダ国境近くに位置しているため、日帰りでも簡単に行けるのだ。
グリューワイン、プレッツェル...指が凍る寒さの中、温かいものを求めてクリスマスマーケットを転々とした。
オランダのシンタクラースをインド料理で祝う
2019年のシンタクラースはクラスメイトと祝った。クラスに10人ほどいるインド人たちが料理を担当。スパイシーなカレーを、ヒーヒー言いながら手で食べたのが懐かしい。BGMにはインドの音楽を流し、ダンスを披露してくれたっけ。
(筆者撮影 2019年12月 クラスメイトたちと、シンタクラースをインド料理で祝う)
また別の日、友達と街の中心部に散歩に行ったら、教会周辺の人ごみに遭遇。何かと思ったらシンタクラースと従者たちが行進してきて、ちょうどパレードを見ることができた。
クリスマスの時期にはあちらこちらに、Oliebollenという揚げ菓子や(直訳すると「油の玉」)チュロス、アップルパイを売る屋台が現れ、甘い匂いをまき散らす。これは今年も変わっていない...店員と客の間のビニール以外は。あと、思い返せば、今年はOliebollenの屋台が出現するのが早かった...秋の初めには既にあった気がする。
(筆者撮影 2018年12月 Oliebollenの屋台)
ざっと思い出すとこんな感じだった私のオランダでの12月。何だかんだで色々とあった。
カフェテリアでクリスマス気分?
今年は、集まりや催し物はなく、ビールの水溜まりもなく(これは嬉しい)、静かな12月。でも師走は師走、レポート課題盛り沢山の一か月(まだ終わっていない)。
オランダは12月の15日から、5週間のロックダウンに入っている。ロックダウンが始まる前日に対面授業があったため大学に行ったら、カフェテリアの照明が薄暗く設定されており、背高のクリスマスツリーが数本。さらにクリスマスソングも流れていた。
ロックダウン中は会えないであろうクラスメイトと作業・談笑しながら、カフェにいるような、不思議な空間をほんの1、2時間だけだが楽しんできた。
あと数日でクリスマス。友達一人をゲストとして招き、ハウスメイトと家で、ゆったりとした夜を過ごす予定である。
著者プロフィール
- 森田早紀
高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。
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