農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり
オランダ農業の最先端とは何か 私の最先端は?
初めまして、お百姓さんになりたくて、オランダの大学で農業を勉強している森田早紀と申します。
なぜオランダという国に農業を勉強しに来ているのか。実はオランダ農業には色々な最先端があるからです。記事の前半では、そもそもオランダ農業とはどういう特徴があるのかを軽く説明し、後半では自己紹介と、最先端に関する私の考えを。
タイトルの質問に対して結論から言うと、オランダ農業の最先端はデジタル化と循環型農業に着目していると思います。ちなみに私の最先端の軸は温故知新です。
~オランダ農業の最先端~
高1の頃の私に、「オランダといったら?」と尋ねたら返ってきたであろう答え:風車、チーズ、チューリップ。よく考えてみると、どれも農業に関係しているものだ。もしかしたら皆さんは既にご存じかもしれない、「オランダは九州ほどの大きさでありながら、アメリカに続く世界第二位の農産物輸出大国だ」ということを(確か高校地理で習った覚えが...)。
その大きな理由が、オランダは欧州の貿易中心地だ、ということであろう。世界中から農産物や食料品がロッテルダム港に集まり、競売・加工などを経て(もしくはただ運搬システムを通るだけで)、外国に再輸出される。
話を変えると、オランダの典型的な風景には風車が欠かせない。風車は歴史上、小さな国土の拡大と農地・住居地の確保において重要な役割を果たしてきたのだ。オランダは国土の4分の1が海抜より低いため、流れ込んでくる海水との戦いと干拓を、風車と共に続けてきた。
海抜が低い上に、「パンケーキよりも平たい土地」という表現があるほどまっ平らな国、オランダ。
そこにはまっ平らな牧草地が広がり、オランダ名物のチーズや牛乳など、主に乳製品用の牛が育てられている。オランダの酪農を支えるのは整備された放牧地の他に、自動化された搾乳機や、一頭一頭の体調を観察するタグ・センサーなど、IT技術がある。
酪農以外の土地の使い方でいうと、麦・ジャガイモ・甜菜・飼料用トウモロコシがオランダの耕作面積のトップを占める。(参考資料:オランダ中央統計局 2020)
チューリップもオランダ名物であり、そう、花卉産業はオランダを代表する産業の一つだ。
自国生産だけでなく、気候・その他条件の良い地域(主にアフリカ)に生産施設を作り、現地生産する。例えばバラ、カーネーションなど。収穫された切り花はオランダへ輸出され、世界最大規模の花卉オークション所で競売にかけられ、多くは外国に再輸出される。
そしてオランダ人は合理的で生産性を重視する国民性なため、農業分野でも、効率よく収量を増やすことが大切な指標である。
天候や土壌・病害虫など、外的要因が最小限に抑えられた施設内での栽培が盛んである。生産者自らが環境要因を制御して、生産効率を最大化できるところが魅力らしい。他にもセンサー・ドローン・高性能トラクターを使い、機械技術とデータを駆使したスマート農業が注目を浴びている。
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著者プロフィール
- 森田早紀
高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。
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