農・食・命を考える オランダ留学生 百姓への道のり
オランダ農業の最先端とは何か 私の最先端は?
また別の最先端もある。オランダの農水省は、循環型農業を推進すると発表した。資源の無駄をなくそう、利用価値を最大限にしよう、という意図だ。
一つの例としてアクアポニックスがある。魚と植物の栽培を融合させた仕組みだ。
別の事例として、コーヒーの抽出かすを培地としてキノコを栽培 ⇒ 使用済み培地をミミズ堆肥にする ⇒ その堆肥を使ってヘンプ(麻)を栽培、という循環型のプロジェクトを昨年、大学の研究者と一緒に行った。世界ではタンパク質不足が問題と言われている中、いかに効率よくタンパク質を生産できるかが注目の的だ。このプロジェクトでも、1.キノコ、2.ミミズ(よほどのことがない限り食べないだろう)3.ヘンプの種 という3種類のタンパク質源を作り出している。
ちなみに家畜に変わるたんぱく質として、昆虫食を推奨する人をオランダの農業分野で見かけることも、まだ少数だけれどある。
さらに違った角度からの最先端がこちら:食べる森・パーマカルチャー・ケアファーム...
生産効率だけ、最適化だけを追い求める農業にうんざりしたり、絶望を感じたりした人々が、長期的に人間と環境の健康・幸せを考えようと、だんだんと広がっている取り組みがある。
ケアファームは日本でいう農福連携に近い取り組みだろうか。オランダでは前世紀から存在し、農家の収入源確保・多様化が目的なところも多い。しかし近年では、心身への健康効果・社会的効果にも注目が集まっている。
日本の農福連携と違うのは、オランダでは労働よりもケアに重点を置き、農園に利用料を払うことが多い、という点。ちなみにケアファームでの滞在は、国民皆保険制度でも承認済みで手当てが出る。
~「最先端」の再定義と自己紹介~
では私は「最先端」をどう捉えているのか。科学・機械技術・IT技術などの進展は、人間の豊かさに貢献してくれる。しかし人間は、よくその使い方を間違える。貨幣はその典型的な例だろう。農業分野でも、例えば人の手が要らなくなり、肥料で作物をどんどん生らせ、農薬で「害(と思われているもの)」は徹底的に排除する。そんな農業と共にある社会はどんなものだろうか。
逆に「時代遅れ」と言われるものに目を向けると、実は何百年もの間持続していたものだったりする。
手間暇をかけて誰かと畑を耕してみること、もしくは信頼している人から食べ物を買うこと。人間の都合で制御することを控え、自然の力を信じ・引き出し・感じること。技術は「全部やってあげる」ではなく「一緒にやろう」精神で活用すること(カップルのお付き合いも同じか?)。
そうすることによって感じられる豊かさは、心の奥底からのものだと思う。芯から人と地球にやさしい農・食こそが、最先端だと思う。オランダでは、長年の生産性追求に反発して、パーマカルチャー等が少しずつ盛り上がってきている。(ちなみにこの最先端についての考えを言語化するにあたって、私の尊敬する環境活動家、岡本よりたかさんの投稿に助けられた)
(筆者撮影 2020年8月 夏休みに滞在したパーマカルチャーの農園にて。冬野菜の種まき)
こんな考えと共に、今はオランダの大学で、食料と花卉の国際ビジネス、という4年制の学部課程で学んでいる。2018年に地元の高校を卒業した後に飛び立ったので、今は丁度折り返し地点だ。大学卒業後は地元に帰り、百の仕事をなすお百姓さんを目指して農の世界に浸ろうと思う。
担い手不足・食料安全保障・健康・環境・貧困などの問題も踏まえ、地域の皆で作り上げる農と食のセーフティーネットなんて、面白そうではないか。農は様々な課題を抱えているが、同時に多くの社会問題の解決策にもなり得ると思う。
~終わりに~
今回は、オランダ農業の紹介・自己紹介として、大雑把にお話ししました。次回以降は特定のトピックを深堀りしようと思います。一学生が、オランダで暮らして学ぶ中、農・食・命について感じたこと・考えたことを綴るブログとなります。これらのトピックに関して気になることがあれば、ぜひメッセージをください。
著者プロフィール
- 森田早紀
高校時代に農と食の世界に心を奪われ、トマト嫌いなくせにトマト農家でのバイトを二度経験。地元埼玉の高校を卒業後、日本にとどまってもつまらないとオランダへ、4年制の大学でアグリビジネスと経営を学ぶ。卒業後は農と食に百の形で携わる「百姓」になり、楽しく優しい社会を築きたい!オランダで生活する中、感じたことをつづります。
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