パスタな国の人々
感染状況激しいインドへ救援に行く、自分も仕事がないのに他人に食事をプレゼントする。そんなイタリア人の助け合い精神はどこから?
これを読んだ時、私は少なからずショックを受けた。我が身の危険や辛さなど顧みず、他者を助ける、その一点にこれほど集中できる人がいるという驚きや尊敬、そして自分は絶対にできないだろうなという、残念というか後ろめたいというか、そんな気持ちも少し。
11人のスタッフの中には小さな子供を持つタティアーナさんという女性看護師もいて、彼女は2歳と4歳の子供を持つお母さんでもある。出発前に子供たちに世界地図を見せ、「ママは病気で困っている人を助けに行かないといけないと」と本当のことを説明したそうだ。ピエモンテ州のエマージェンシー・チームに属する彼女はアルメニアにも救援に行っていて、同じようにしてきたという。会社員の夫が今はスマートワーキングだから、子供の世話を任せて出発できるんだという。
#GiornatadellInfermiere "La situazione è difficile. I pazienti sono tanti. Mancano maschere, caschi cpap, personale, ossigeno. Noi abbiamo portato il generatore d'ossigeno" Tatiana Alborno, infermiera in missione in #India, a @chegiornoRadio1 https://t.co/kZ9aPM35lN
-- Rai Radio1 (@Radio1Rai) May 12, 2021
当然、anti Covid-19と、それ以外のワクチンも全て接種を受けて現地へ向かうとは言え、防護効果100%ではないのだから身の危険は伴うし、家族にも大きな心配をかける。それでも行くというのは、ものすごい使命感に突き動かされて、ということなんだろうか。
そういえば、コロナの感染拡大で地獄のような日々だったイタリアが、大地震に襲われたアルバニアへ救援チームを派遣したのにも驚かされたのを思い出す。アルバニアは地震が多く、過去に何度もイタリアは救援に行っている。そのお返しにと、その後すぐにアルバニアの医療チームが助けに来てくれたのだった。
私のイタリア暮らしは今年で26年になろうとしているが、時に怠け者で自分勝手なで仕事が雑なイタリア人たちに辟易することは未だに多い。だが困っている人をさっと助けられる対応力というか、見て見ぬ振りをできない優しさは本当に素晴らしいな、といつも思ってきた。
道で転べば、恥ずかしいからほっといて!と言いたくなるほど、寄ってたかって助けてくれる。道を聞けば、やっぱり寄ってたかっていろいろな人がいろいろ言ってくるから、余計わからなくなったり。そんな小さなことから、前ページに書いたような大きな救援活動まで、とにかくイタリア人の助け合い精神は素晴らしいよね、とイタリア好きで、イタリアに詳しい人たちは声を揃える。
なぜなんだろう? カソリック教徒だから、とよく言われるけれど、本当にそうだろうか? イタリア国民の80%はカソリック教徒だというデータがあるが、若い人たちを見ていると、洗礼は受けているものの、形だけの人が多いという印象だ。特に北部イタリアでは、教会にせっせと通ったり、お祈りをしたりする人は、60代以下ではあまり多くないように見える。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。