パスタな国の人々
ワクチン接種率はようやく20%、感染者も死者数もまだ多い、なのにロックダウン解除のイタリアの行方。
復活祭前にはホワイトゾーン(ほぼウイルスフリーで、レストランの営業も再開。映画館もジムも再開。他の州では夜10時から朝5時までは外出禁止だが、それもなし)になってイタリア中の羨望の的だったサルデーニャは、観光客や別荘族が持ち込んだウィルスによって、あっという間にレッドゾーンに転落した。そして今、他の州がイエローゾーンになる4月26日以降も、数少ないレッドゾーンのまま残留が決まった。
サルデーニャ島ラ・ペローザの美しすぎるビーチ。今は地元の人独り占めだ。(写真:iStock/kasto80)
もっと怖い話もある。チリの例を引き合いに出し、警鐘を鳴らすのはパドヴァ大学ウイルス学と微生物学教授アンドレア・クリサンティ氏。氏は以前はインペリアルカレッジで教授をつとめていた一流の学者だ。
曰く「チリでは国民の70%が、有効性60%という中国製ワクチンSinovakの接種を受けた。これは全国民がワクチンによる保護を平均40%得たという計算になる。そして行動規制を徐々に解除した結果、2ヶ月後には感染が爆発的に増えた。ワクチンに強い耐性を持つ変異種も激増した」。
同じ計算をするとイタリア国民が得たワクチンによる保護は、なんと平均12%にしかならないと言う。
サルデーニャやチリみたいになるんじゃないか? そんな不安が拭えない一方で、自由になって嬉しい、これでやっと仕事ができる、という想いが錯綜する今日のイタリア。ここのところやっと加速されてきているワクチン接種が、このまま滞ることなく進み、楽しいバカンスがやってくることを祈るばかりだ。
著者プロフィール
- 宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住フードライター・料理家。イタリアと日本の食を取り巻く情報や文化を、「普通の人」の視点から発信。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」でのコロナ現地ルポは大好評を博した。現在は同ブログにて「トリノよいとこ一度はおいで」など連載中。