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スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

携帯電話は16歳から?スペインで進む未成年に対する規制の波

©️Shutterstock - A_B_C

女性の権利や多様性への取り組みなど、これまで社会の様々なリミットを取り除いてきたスペイン。しかし最近では未成年の教育や健康に考慮して、新しい制限を設けようという動きがいたる自治体で起こっています。今回制限の対象として名前が上がっているのが「携帯電話(スマートフォン)」と「エナジードリンク」。現代ではこれらは当たり前のように若者も消費しているのですが、心と身体の健康のことを考えて年齢制限を設けた方がいいという保護者の声が多く上がるようになってきたのです。

 

便利になった一方で・・・

テクノロジーの発展によって携帯電話さえあれば我々はどこにいても誰とでも繋がれる便利さを手に入れました。しかし便利な一方で情報漏洩、ネット犯罪、メンタルヘルスなど新たな問題も危惧されています。これらの問題は日本に限らずスペインのような国も同じで、インターネットを使用したイジメや性犯罪が若者の間で増えて来ていることが現在国内で問題になっています。スペインでは12歳の子供の10人に7人が自分の携帯電話を所有していると言われていますが、保護者や教育関係者らの間では携帯電話への依存やメンタルヘルスへの影響が心配という声が多く上がっているのです。またインターネットを通してアダルトサイトへのアクセスが容易になってしまっていることが、最近増えている未成年の性犯罪に大きく関係しているという指摘もあり、実際に数ヶ月前には携帯電話を使用したとある未成年による性犯罪が話題になりました。

  

人工知能を使用した性犯罪

今年9月スペイン南部のエストレマドゥーラ州にある人口3万人の小さな自治体で、14歳の女生徒の母親が「娘のヌード写真が拡散されている」と警察に訴えニュースになりました。しかもこのヌード写真は本物ではなく人工知能を使用したアプリケーションで加工された写真だったのです。この母親が声を上げたことによって捜査が進み、この女生徒以外にも約30人の女生徒がこのアプリを使用して写真を加工されグループチャットで拡散されていることが判明しました。この事件には14歳以下の男子生徒5人を含む未成年26人が捜査の対象となり、スペイン国内で未成年の携帯電話の付き合い方について考えさせられる大きなきっかけとなったのです。

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©️Shutterstock - Daisy Daisy

   

一人の教師が始めた署名活動に6万人以上が署名

今回の携帯電話に年齢制限を設けようという動きはカタルーニャ州から始まりました。先月バルセロナのある学校の保護者がテレグラムで子供に携帯電話を持たせることを反対するためのグループを設立したところ、噂があっという間に広がりグループのメンバーが5000人に達したのです。これに影響を受けたトレド市の教師アンヘラ・サンチェスさんは、教師仲間のナタリア・ヒメネスさんと手を組み署名運動を開始。全国から集まった6万3千もの署名を議会に提出し、「未成年の携帯電話所持を法律で制限してほしい」と訴えました。「教師として、ここ数年で生徒の身に深刻なことが起きていることを認識しています。学校ではいじめが行われ、家に帰ってもネットを通していじめは続き、最悪な結末を迎えることもあるのです。うつ病や不眠症、注意力の欠如も見受けられ、ビデオを見せないと生徒らは話を聞きません。あなたが口頭で説明しても彼らは耳を貸さないのです。」国内では既に校内での携帯電話の使用を制限している学校も出てきているようですが、こう言った規制の動きに賛成している保護者や教育関係者が多くいることから、今後同様な動きが全国的に広まってくることが予想されます。

  

エナジードリンクを未成年に売ると罰金3000€

近年どんどん拡大していくエナジードリンク市場。疲れた時に「翼を授けてくれる」エナジードリンクですが、一方で健康への悪影響も危惧されています。スペインでは現在、未成年者が日常的にエナジードリンクを消費していることが調査で分かり、エナジードリンクに含まれるカフェインと砂糖が子供たちの発達に影響を与えるのではないかと問題視されています。これに対してまず初めに対策に乗り出したのがスペイン北部のガリシア州。この州では未成年者へのエナジードリンクの販売と消費を法律で規制することが決定し、2024年から施行されることになりました。もし未成年者に対してエナジードリンクを販売した場合、販売した側は3000ユーロの罰金が科せられることになります。ガリシア州の他にも10の自治体が同様の規制を設けることを検討しており、携帯電話と同じようにこれから未成年に対する規制がどんどん広がっていくことは間違い無いでしょう。2021年に行われた調査によると、スペインの未成年の約半数が1ヶ月以内にエナジードリンクを消費したと回答しており、専門家らは未成年の依存や肥満、精神の安定などに大きな影響を与えるとして若者らのエナジードリンク消費の危険性について警鐘を鳴らしています。

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©️Shutterstock - Art Konovalov
 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

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