World Voice

ベネルクスから潮流に抗って

岸本聡子|ベルギー

再び、ロックダウンの波(ベルギー)

クレジット:Drazen Zigic

ベルギーでは約2週間前にカフェとレストランは閉鎖され、先週木曜日(10月29日)から屋内、屋外のスポーツ活動が停止になった。私の空手の稽古も、息子のサッカーの練習、試合もなくなってしまった。そして今日からは食品と薬局以外のお店の営業が停止する。コロナ第二波が襲うヨーロッパの各国は(セミ)ロックダウンの暗い雰囲気に包まれている。フランス、英国、オランダ、スペイン、チェコ、アイルランド、オーストリアが程度の差はあれロックダウンに入った。ベルギーで、セミロックダウンの措置は6週間と言われていて、感染が劇的に低下すれば4週間で措置は変わるかもしれない。

徐々に行動範囲が制限されていくと、3月から約3カ月続いたかつてのロックダウンの記憶がよみがえってきて息苦しくなる。前回との圧倒的な違いは、本当に暗い。日が短くなって雨風が多く、もともと憂鬱な天候の秋冬のベルギー。冬時間に変わったとはいえ夕方5時には暗くなる。朝も遅い。ただでさえ長い冬を前に滅入りやすいときに、友達に会ったりスポーツができないのは精神衛生上きつい。すでに長く続くお年寄りの孤独の問題も心配だ。

それでもベルギーは、なんとか保育や学校を閉鎖したくないと踏ん張っている感じで、私はセミロックダウンと理解している。ベルギーの学校は今週から1週間の秋休み。それを延長するかをめぐって政治の場では大議論があった。結果的にはもう1週間休みを伸ばし、小中学校は2週間の秋休みとなった。中学生は授業中もずっとマスク着用、喚起のため窓を開けての授業だった。先生たちの心労も大変なことだろう。

病院の病床の利用率は深刻なレベルに達している。10月14日からベルギーすべての病院は、コロナ重症者に集中治療室のベットを25%確保することを義務づけるphase 1Aになった。緊急でない手術や治療が延期される。このような中、シャルルロワやアールストをはじめ14の病院が、感染が一番拡大しているキャパ不足の首都ブリュッセルからの患者の患者の転送を拒否する不穏なニュース。

感染がここまで増える数週間前に段階的な厳しい措置を取るべきだった、または専門家の反対にも関わらず、夏にルールを緩めすぎたと多くの人が指摘する。厳しい措置で経済が停滞するのを避けたい勢力は強い。経済優先右派のフランダース地域政府は数週間にわたって、感染者が比較的多かったブリュッセル政府とワロン地域政府を攻めて不毛な対立を煽った。結局、フランダースでも感染者が増え、全く説得力を失った。そればかりかセミロックダウンが避けられない状況まで来てしまって、経済によりインパクトを与えることになってしまった。

同じ国内で、患者の輸送の拒否という殺伐とした雰囲気の中、隣国ドイツが「近隣の国の患者を助けられることに謙虚に感謝しつつ、できるだけ早く、できる限り受け入れる」と表明した。公務・公営企業省大臣ペトラ・デ・スゥター氏が感謝をツイッターで表明した。危機下の時こそ、エゴを超えた連帯と協力が必要だし、そういうメッセージが暗いロックダウンに光を与えてくれる。

 

Profile

著者プロフィール
岸本聡子

1974年生まれ、東京出身。2001年にオランダに移住、2003年よりアムステルダムの政策研究NGO トランスナショナル研究所(TNI)の研究員。現在ベルギー在住。環境と地域と人を守る公共政策のリサーチと社会運動の支援が仕事。長年のテーマは水道、公共サービス、人権、脱民営化。最近のテーマは経済の民主化、ミュニシパリズム、ジャストトランジッションなど。著書に『水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(2020年集英社新書)。趣味はジョギング、料理、空手の稽古(沖縄剛柔流)。

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