Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
シドニーのスーパーの棚がほぼ空っぽに!?私たちが依存するある重要なことを除外した結果...
パニック買いではない。
シドニーのスーパーマーケットが、あることを「条件」に該当する商品を棚から取り除いたら、多くの食品棚がほとんど空っぽになってしまったのだ。
それは、自然環境の中で常に行われているが、日常で気に留める人はあまりいないかもしれないある条件──
それは、私たちの暮らしを密かに支え、無くなったら生活が成り立たなくなってしまうほど重要なこと・・・一体、その「条件」とは何なのか?
数百もの食品が棚から消えた!?
3月4日、シドニー郊外にある大手スーパーマーケット、ウールワース・ニュートラルベイ店で、興味深い試みが行われた。
私たちの暮らしを陰で支えている、ある重要な条件に該当する商品を取り除き、私たちがどれだけそれに依存しているかを可視化する、というものだ。
ウールワース・ニュートラルベイ店で、その条件を当てはめたところ、なんと数百もの商品が棚から消えることになってしまった。
Shelves of a Sydney store are empty -- but it's not because of panic buying. https://t.co/bjTkScBEBj pic.twitter.com/cg5PMIh2AY
-- nzherald (@nzherald) March 4, 2021
その重要な「条件」とは・・・『受粉』だ。
ミツバチや蝶などの昆虫が花の蜜に集まり、受粉が行われることで植物の実がなることは、小学生でも知っていると思うが、スーパーマーケットに並ぶ身近な商品のどれくらいのものが、受粉に依存しているかを知る人は少ないだろう。
「受粉」と聞いて、私たちがイメージしやすい野菜や果物はもちろん、コーヒーやサラダ油、シリアル、ジュース、アーモンドなどのナッツを使った商品などなど...そして、当然だけれども(受粉に関わるミツバチがいなくなることが前提のため)ハチミツやハチミツを使った商品も、この試みでは棚から消えることになる。
ミツバチ減少の問題は、種の保全とかそういった問題だけじゃない。ネオニコチノイド系農薬によってミツバチが死んじゃうからダメ!かわいそう!とかいう感情論でもない。ミツバチの存在は、農薬による毒性以上に人間にも影響があるんだけど。
-- Miki Hirano (@mikihirano) December 25, 2014
ミツバチのために人間は何ができるか
「オーストラリアの農作物の65%は『受粉』に依存している」と、ウールワースの広報最高責任者アンドリュー・ヒックス氏は言う。そして、この大胆かつ考えさせられる試みを行った理由について、次のように語った。(参照)
「このことで、私たちが目指したのは、オーストラリアの家庭において、ミツバチのいないスーパーマーケットがどのように映るか、そして、その影響が果物や野菜だけにとどまらないということに気づき、話し合うきっかけになって欲しいということです」
オーストラリアは、昨夏の大規模森林火災やこれまで数年にわたって続いてきた旱魃(干ばつ)、洪水などの影響で、森や草原地の消失が加速している。それに伴い、花資源が激減し、ミツバチをはじめとするポリネーター(花粉媒介者)の昆虫たちは行き場を失って、数も減少しているのが現状だ。そして、気候変動によってポリネーターが危機に晒されているのは、なにもオーストラリアに限ったことではない。
英国ではミツバチに危害を及ぼす農薬はもう使用しない...
-- Miki Hirano (@mikihirano) March 5, 2021
ミツバチ、大事
UK will no longer use bee-harming pesticide https://t.co/cAUJ4kYHYD
では、この危機に対し、私たち人間ができることはないのだろうか?
「ミツバチのために何かできないか?」と、よく聞かれるという養蜂家のレイザ・サムスさんは、いつもこう答えるという。
「答えは簡単。ミツバチが花粉や蜜を生産する植物に一年中アクセスできるよう、自宅の庭にミツバチに優しい植物を植えること」
まさにこのことを実行に移すために、ウールワースでは現在、2019年に続いて、自分で野菜やハーブ、花を育てるキットがもらえるキャンペーン「ディスカバリー・ガーデン」を展開中だ。このキャンペーンこそ、自然を身近に感じて、その大切さを実感してもらいたいという啓蒙活動の一環なのだろう。
スーパーのWoolworthsで貰ったDiscovery Garden を作ってみたよ! pic.twitter.com/f4yWHskJvU
-- Miki Hirano (@mikihirano) February 28, 2021
前出のヒックス氏はこう続ける。
「ミツバチがいかに重要であるかを知り、今日から些細なことでも、我々一人一人がそのことに配慮して行動すれば、より良い明日が築けるはずです」
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/