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ダイバーシティ先進国ベルギーから観る欧州 LGBTQI 事情

ひきりん|ベルギー

欧州では既に同性愛者の首脳が誕生している【中編】

当事者リーダー同士の親密な関係

前編で取り上げたルクセンブルクのベッテル首相とは関係が近いと見られ、経済分野の協力を中心に外交の場でも公私ともに緊密な様子が窺える。

2019年5月、ベッテル首相がセルビア訪問した際の2人の視察先は、ICT企業。


2019年9月、今度はブルナビッチ首相がルクセンブルクへ。ベッテル首相のことを「my friend」と呼んでいる。


ベッテル首相もブルナビッチ首相たちのことを「our friends」と呼び、外交の傍ら、両パートナーも
揃い踏みの市内観光やサッカー観戦へ。試合はヨーロッパ選手権予選のルクセンブルクーセルビア戦。



パートナーに男児誕生、法的には首相は母親と認められない

ブルナビッチ首相には長年連れ添う女性パートナー、医師のミリツァ・ジュルジッチさん Milica Đurđić がおり、昨年2月にはジュルジッチさんが イゴル Igor くんと名付けられた男児を出産。世界で初めて同性同士で子育てをする国のリーダーともなった。

しかし、セルビアは非常に保守的で伝統的な家族観が根強く、家父長制が幅を効かせる国。また、同性婚もシビルユニオン(法的同性パートナーシップ)もまだ認められておらず、法的にはブルナビッチ首相は母親と認められない。先にも述べたように今は全面的に経済最優先の姿勢を示している首相は、同胞のLGBT関連の法整備には消極的な姿勢が目立ち、それが国内のLGBT当事者たちの離反を招いている。これも国民の大半がセルビア正教を信仰し、同性愛に嫌悪感を抱く社会状況の下で、あらゆる改革が求められるセルビアとにっては政策の優先順位を付けなけれず、結果マイノリティ施作が後回しにならざるを得ないのが現状だ。

なお、今年6月の議会選挙の結果を踏まえ、今月には新内閣の発足が予定されているセルビアだが、ブルナビッチ首相が再任される可能性が高いと聞く。長く首相の座に留まり、あらゆる面で改革を成し遂げ、国の発展に寄与するよう今後の活躍を期待したい。

2019年のプライドパレードに参加したアナ・ブルナビッチ首相とパートナーのミリツァ・ジュルジッチさん


次回はシリーズ最後の後編、バラッカー・アイルランド副首相(前首相・次期首相)を取り上げるので、引き続きお楽しみに。


*コソボは2008年にセルビアから独立を宣言、セルビアはこれに反対し、自国内の自治州として「永遠に」独立を認めないという立場。日本をはじめ、アメリカやフランス、イギリス、ドイツなどEU主要国など世界98ヶ国がコソボを独立国家として承認している反面、セルビアをはじめ、ロシア、中国、スペインなど国連加盟の半数近くの85ヶ国が承認を拒否している。スペインが承認拒否しているのは、自国にバルセロナを州都とするカタルーニャ州が分離独立問題を抱えているためだ。



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*LGBTは知っているけれども LGBTQI って何?と仰る方は、下記記事の最後に詳しく説明しているので
併せてお読み下さいませ。

コロナ禍でゲイタウンもひっそりと
同性婚導入17年経過のベルギー、新婚の40組に1組は同性同士

 

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著者プロフィール
ひきりん

ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。

ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記 

Twitter:@hiquirin

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