テイラー・スウィフトが脱「いい子」して宣戦布告
Miss Americana Unveils a New Swift
政治とは距離を置いていたスウィフトが今までの殻を突き破った COURTESY OF NETFLIX
<人気絶頂のシンガー、テイラー・スウィフトを追ったドキュメンタリーは過去のイメージを脱ぎ捨て政治への関わりを強める彼女の決意を描く>
毎年1月に米ユタ州で開かれるサンダンス映画祭は、スターと気軽に会えるインディーズ作品の祭典。今年もスティーブ・ブシェミが雪道を歩いてバスに乗ったり、大ヒットミュージカル『ハミルトン』のキャストが街角でおしゃべりする姿が目撃された。
そこへ尋常ではない熱気を運んだのが、人気絶頂のシンガー、テイラー・スウィフトのドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』(ネットフリックスで配信中)。映画祭の常連はプレミア上映の1時間半前から列を作り、スウィフトのファンは氷点下の屋外で彼女の曲を歌い続けた。
イメージを何よりも重視するスターの「ドキュメンタリー」など、それ自体が自己矛盾にも思える。監督のラナ・ウィルソンも美化こそしていないが、欠点まで含めたスウィフトのありのままの姿を伝えているわけではない。
最近の自分の変化は恋人のイギリス人俳優ジョー・アルウィンの影響もあると、スウィフトは言う。しかしアルウィンは、ほんの一瞬登場するだけ。スウィフトも出演してヒットした映画版『キャッツ』にも触れていない。
この作品はスウィフトの素顔に迫るものではなく、つくられたイメージを捨てようとする彼女の決意を描いたものなのだ。特に強調されるのは「いい子」であろうとした自分からの脱却。冒頭でスウィフトは、人生の大半を「いい子であるべき」という考えに振り回されたと語っている。
作品は、スウィフトの言葉を借りると「私の頭に刻み込まれた『女性らしさへの嫌悪』を払拭」し、周囲に嫌われても大したことはないという考えに至った道のりを、過去の映像を交えて追っていく。
選挙イヤーだからこそ
スウィフトは変化のきっかけとして、いくつかの事柄を上げている。ラッパーでプロデューサーのカニエ・ウェストとの確執へのバッシング、ラジオのDJを相手にしたセクハラ裁判での勝利、メディアの目を避けてアルウィンと交際を続けた日々......。