コラム

広島G7サミットで日本が失ったものは何か

2023年06月02日(金)19時30分

日本が本当に何を勝ち取るべきものは

岸田政権がイデオロギー面でのパフォーマンスに拘泥し、日本が本当に何を勝ち取るのか、が見えなくなっていることは残念だ。

今回の広島G7サミットでは、覇権争いに不必要にコミットすることなく、自由市場に基づくグローバルサウスとの連携を強く打ち出し、同連携を難しくするリベラルな価値観の打ち出しを最低限に抑えるべきだった。

アジアの国としてグローバルサウスとの経済的な一体化を進めて、彼らが中国一辺倒になることを防止することが重要だ。必要なことはグローバルサウスの国にリベラルな価値観に基づいて説教することではない。

そして、筆者はこれこそが中国のグローバルな影響力拡大を抑えるとともに、世界の経済発展・貧困削減に貢献する唯一の方法であるように思う。

欧米諸国は広島G7サミットを利用して、日本に彼らの価値観に対して明確に再コミットさせた。そして、岸田政権は見事なまでに自発的に欧米に組み込まれる道を選んでしまった。

サミット開催国として舞い上がった挙句、日本は無自覚なままに他の選択肢を失ってしまったと言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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