- HOME
- コラム
- リバタリアン・マインド
- 米国の外交安全保障、米国が選択する3つの道に備える
米国の外交安全保障、米国が選択する3つの道に備える
外交力を駆使して世界情勢を安定させる「第二の道」
今、バイデン政権は「第二の道」を選択しつつある。「第二の道」は冒頭のように外交力を駆使することによって、世界情勢を安定させるとともに、民主主義の価値観を共有する同盟国と協力して、中国の影響力拡大を阻止するというものだ。バイデン政権はトランプ政権の忘れ形見であるクアッドだけでなく、欧州諸国との関係改善なども対中・対ロなどの対権威主義国の文脈で機能させようとしている。
トランプ政権の単独行動主義の試みが不十分な成果しか生まなかった以上、筆者はバイデン政権による外交安全保障の方針転換には肯定的である。むしろ、米国が対中国で取り得る現実的な選択肢はこの道しかほぼあり得ない。
しかし、このバイデン政権の「第二の道」も茨の道であることに変わりはない。世界は必ずしも民主主義の価値観を第一の国是に据える国ばかりではない。むしろ、バイデン政権の外交安全保障政策に対し、民主主義と権威主義の間で揺れ動く東欧諸国やアジア諸国が米国から実質的に距離を置く可能性すら否定できない。「第二の道」が世界中の国々から支持を受けて必ず成功すると断言する根拠は存在していないのだ。したがって、我々はバイデン政権が志向する「第二の道」にも失敗というリスクがあることを認識するべきだ。
仮に米国が「第一の道」「第二の道」に限界を感じて、対中国という方向性自体を諦める「第三の道」を選択した場合、世界はどのようなものになるだろうか。筆者はバイデン政権以後の米国がそのような道を取ることも想定し、その備えを予め十分にしておくことが必要だと断言する。
米国が海外関与から撤退する「第三の道」、その時日本は......
米国が採用し得る「第三の道」とはケートー研究所などのリバタリアン系シンクタンクが伝統的に主張している、彼ら米国が海外関与から撤退する道である。最近では新興のクインシー研究所らも加わり、従来よりも幅広い層からの国内世論の支持を形成し始めている。この主張は21世紀初頭に米国で一世を風靡したネオコンの論理とは真逆のものであり、米国が不必要な戦争などに巻き込まれる可能性がある対外関与から手を引くことを基調としている。
米国は20世紀以降自らよりも経済力が上回る敵対者と競争したことがない。したがって、仮に中国の経済成長が継続した場合、米国が中国との軍事的・経済的な競争自体を諦めて肩の荷を下ろす衝動に駆られることも十分にあり得る。人間の命の値段が高い民主主義国では十分に想定されることだ。
その際、日本は一人で世界の大海原の中に突如として放り出されて、自らの意志で泳いでいくことが求められるようになる。もちろん、対中国だけでなく、対アジア、対欧州、そして対米外交すらも自らの意志と能力で乗り切ることが必要となる。現在の対米一辺倒の保守派や親中で思考停止した経済界や左派勢力のように、自らの意思・能力を示す力が欠如した人材のみでは、国難に際して日本の舵取りをしていくことは困難になるだろう。
米国には「第一の道」「第二の道」だけでなく、常に「第三の道」が用意されているということを忘れず、日本には次代を背負う自主独立の精神を持った真のリーダーの育成を育成することが急がれる。米国が「第三の道」を選択するとき、その時が日本にとっての本当の試練の時となるだろう。
日本のサイバーセキュリティが危ない!時代に逆行した法案が導入検討されている 2024.03.19
トランプ新政権の外交安全保障を「正しく予測」する方法 2024.02.26
サウジアラビア人社長の日本愛が創る「日本の中東ソフトパワー」 2024.02.16
ウクライナに対する復興支援に日本の納税者の納得はあるのか 2024.02.02
独走するトランプ前大統領の再登板に死角はあるのか 2024.01.29
日本は喫煙に関するよりマシな選択肢を得ようとする欧州諸国を見習うべきだ 2023.12.11
日本政府のスマホアプリ規制、欧州のマネして拙速なリスクを取る必要があるのか 2023.11.29