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トランプとバイデンの限界を露呈した第1回大統領候補者討論会
泥仕合の中にも選挙キャンペーン上重要な要素が見えた...... Morry Gash/REUTERS
<トランプ・バイデン両候補者による第1回大統領候補者討論会が行われたが、今後の展開を示唆する選挙キャンペーン上重要な要素が見えた......>
9月29日に開催されたトランプ・バイデン両候補者による第1回大統領候補者討論会は候補者だけでなく司会者を巻き込む泥仕合となり、視聴する側としては見るに耐えかねる内容であった。しかし、そんな候補者討論会の中にも今後の展開を示唆する選挙キャンペーン上重要な要素があった。それはトランプ・バイデン両候補者の現時点での限界である。
トランプ大統領のブランディングがはっきりしていない
トランプ大統領は討論会中終始一貫してバイデン副大統領及び司会のクリス・ウォレスの発言に割って入る言動を続けていた。これは台本やシナリオを全く容易していないときのトランプ大統領のいつもの反応であり、そのこと自体は今更驚くべきことではない。ただし結果として、トランプ陣営には選挙キャンペーン上重要な要素がいまだに欠落したままであることが分かった。
それはトランプ大統領のブランディングである。もちろん、トランプはトランプであって今更ブランディングの必要があるのか、という声もあるだろう。しかし、選挙キャンペーン上候補者のブランディングは極めて重要である。
前回2016年の大統領選挙はMAGA(Make America Great Again)やアメリカ・ファーストという明瞭なキャッチフレーズ、そして反エスタブリッシュメント、反不法移民、反国際協定、反増税、反終わりなき戦争などの効果的な争点設計が打ち出されていた。一見して滅茶苦茶なトランプ大統領の言動も実は一つの流れとして、対ヒラリーという文脈でしっかりと設計されていた。トランプが選ばれた理由は少なくともトランプに投票した人々にははっきりしていたものと思う。
しかし、今回2020年大統領選挙ではトランプ陣営に明確なキャッチフレーズはなく、次々と変わる社会状況や拡大する接戦州を受けて、「トランプ大統領は再選して何をするのか」という説得力があるメッセージを有権者に伝えきれていない。討論会中、唯一聴衆の心を引き寄せたと思われる内容は「法と秩序」のメッセージであるが、それが選挙全体を貫くコンセプトになっているとは言い難い。つまり、自己ブランディングの達人であるトランプが最も得意とする能力を十分に発揮できていないのだ。このことは現在のトランプ苦戦の最大の要因の1つとなっていると思う。
バイデン元副大統領次男の疑惑は払拭されず
一方、バイデン元副大統領にとっては、討論会のパフォーマンスを通じて共和党側のネガティブキャンペーンである健康不安説を払拭できたことは大戦果だ。大統領候補者として何とも低い目標であるが、バイデン陣営にとっては何物にも代えがたいものだろう。
ただし、バイデン元副大統領は次男であるハンター・バイデンの疑惑について明確に答えることができていなかった。トランプ大統領が指摘したハンターのロシアや中国との不明瞭な資金の流れに関する疑惑は、連邦上院議員によって正式に報告書として提出されて指摘されているものだ。たしかに、同報告書だけで正確な裏付けがあるスキャンダルだと断定できないが、バイデン元副大統領はそれが「事実ではない」と否定するだけでは根拠として弱い。トランプ大統領であればリベラル系の大手メディアからの100%袋叩きにされる事案である。
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