- HOME
- コラム
- ベストセラーからアメリカを読む
- 今年のネビュラ賞受賞作は、現在のパンデミックと隔離…
今年のネビュラ賞受賞作は、現在のパンデミックと隔離生活を予言したかのような近未来SF
現実にパンデミックで人々が隔離された生活をするようになり、Amazonはますます人々の日常生活に入り込んでいる。何をどこでどう購入するのか、利用者のデータをすべて持っている。その恐ろしさを感じている人は多いと思う。この小説では、Amazonを連想させるような SuperWallyや、ミュージシャンを道具としてしか扱わないSHLが、隔離政策を利用して人々を完全に操ろうとしている。これはSFとはいえ、現実的な恐怖だ。
現在アメリカで起こっている「自宅待機」や「マスク使用」への反発、抗議デモでの若者の団結などを見ると、このSFが語る「人々が実際につながることへの強い欲求」には説得力がある。
世界は悪い方向に向かっているようにも見える。だが、このSFの登場人物がほとんど女性で、恋愛関係もすべて同性愛ばかりであり、それがごく自然に描かれていることに社会が実際には進歩していることを実感する。筆者が子どもの頃に愛読したSFは、今振り返ると主要人物はほとんど男性であり、恋愛関係もヘテロセクシャルの男性の視点ばかりだったから。
こういったことを考えると、未来は決して暗くはないと思うのだ。また、未来を作るのは私たちなのだから、自分たちでなんとかしなければならない。それも感じさせてくれるSFだ。
『A Song for a New Day』
Sarah Pinsker
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
【話題の記事】
・新型コロナ「勝利宣言」のニュージーランドにも新規感染者
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・米6州で新型コロナ新規感染が記録的増加 オレゴンでは教会で集団感染
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...
英王室から逃れたヘンリー王子の回想録は、まるで怖いおとぎ話 2023.01.14
米最高裁の中絶権否定判決で再び注目される『侍女の物語』 2022.07.02
ネット企業の利益のために注意散漫にされてしまった現代人、ではどうすればいいのか? 2022.03.08
風刺小説の形でパンデミックの時代を記録する初めての新型コロナ小説 2021.11.16
ヒラリーがベストセラー作家と組んで書いたスリル満点の正統派国際政治スリラー 2021.10.19
自分が「聞き上手」と思っている人ほど、他人の話を聞いていない 2021.08.10