コラム

注目を集めるミレニアル世代の大統領候補ピート・ブティジェッジ

2019年04月11日(木)19時50分

選挙イベントでメディアに囲まれるブーテジェッジ(筆者撮影)

<保守色が強いインディアナ州サウスベンド市長のブティジェッジは、同性婚の公表後も市民から信頼されている新世代の政治家>

次回の大統領選挙の投票日は2020年11月3日だが、予備選挙はすでにスタートしている。

アメリカ大統領には2期(8年)という任期の制限がある(大統領の死亡などで引き継いだ場合には10年が制限)。現職大統領のトランプはまだ一期なので、彼が属する共和党サイドでは対立候補はほとんど現れていない。元マサチューセッツ州知事のビル・ウェルドが立候補を前提とした準備委員会を設置し、2016年で予備選を戦ったオハイオ州知事のジョン・ケーシックが考慮しているとのことだが、トランプを破る可能性は低いとみなされている。

一方でトランプの再選阻止を狙っている民主党側では、立候補を前提とした準備委員会を設けている候補を含めると4月8日現在でなんと20人が名乗りを挙げている。まだ立候補を表明していないものの世論調査ではトップに位置するジョー・バイデン元副大統領を含めると21人という賑やかさだが、さらに数人が加わる可能性がある。

これらの候補にとっての最初のハードルは6月末と7月初頭に行われる最初の民主党ディベートだ。これらのディベートに参加する資格を得るためには、世論調査で1%以上の支持を得るか、あるいは個人からの寄付金を6万5000人以上から集めなければならない。

ディベートにすら出られない候補はこの時点でほぼ落脱する。ディベートに出られても、その場で全米にアピールできなかった候補は、選挙活動に必要な資金が集められない。こういった理由から、予備選の最初の投票までに過半数は脱落するであろう。

予備選の最初の投票は2020年2月3日のアイオワ州のコーカス(党員集会)で、州全体の有権者を対象にした投票としてはニューハンプシャー州の2月11日が皮切りになる。この2つの州のどちらかでトップ3位かそれに近い票が取れなかった候補も、このあたりで続けるかどうかを決意せざるを得なくなる。

このように大統領選はとても長い。2019年4月の時点では「この先何が起こるかわからない」としかいえない初期段階にすぎないのだが、民主党サイドでの予備選はすでに盛り上がっている。

その中でも「若かりし頃のバラク・オバマを連想させる」として注目されているのが37歳のピート・ブティジェッジ(本人による発音の方法はboot-edge-edge)だ。つい数カ月前までは無名の存在だったのに、4月7日に発表されたエマーソンの世論調査では、本命視されているカマラ・ハリス(7%)やロックスター的な扱いをされているベト・オルーク(8%)を抜き、ベテランのエリザベス・ウォーレン(14%)に迫る11%の支持率を得ている。

人口が約10万人のインディアナ州サウスベンド市の市長でしかないブティジェッジがなぜこれほどの人気を集めているのか知るために2月12日に発売されたブティジェッジの回想録『Shortest Way Home(故郷への近道)』を読んでみた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story