いま、紹興酒が日本でブーム!(の兆し) 「女児紅」「孔乙己」知ってる?
北京の黄酒専門店 CREATIVE IMAGES/SHUTTERSTOCK
<紹興酒不遇の時代が終わりを告げようとしている。探求心の強い日本の酒マニアたちが「未開拓」の紹興酒に興味を持ち始めた>
昨秋、週刊文春の連載「新・家の履歴書」に取り上げられた。生まれ育った中国浙江省の紹興から北京、東京へと移り住んできた自分の半生を振り返る内容だが、冒頭で私はこう語っている。
「紹興市は、その名の通り紹興酒で有名な町......わたしも『美味しいものは小さいうちから味を覚えておけ』と、子供の頃に飲まされたものでした」
すると、何人かの読者から「紹興酒を子供に飲ませるなんて違法じゃないの?」とのご指摘があった。念のため説明しておくと、子供の頃に飲んでいたのは自家製の米酒。アルコール度数が低く、日本の甘酒に近い濁り酒だから、大丈夫(たぶん)。
わが故郷の愛すべき名産品、紹興酒は、日本でもよく知られた存在だ。だが残念ながら、ワインやウイスキー、日本酒、焼酎と比べると、銘柄まではあまり認知されていない。中国に紹興という街があることも知られていない。
しかし今、そんな不遇の時代が終わりを告げようとしている。「大ブーム」とまでは言えないが、その兆しがあるのだ。きっとブームは来る、いや来てほしい。日本人にもっと、文化の薫り漂う芳醇な紹興酒の魅力を知ってもらいたい。
米などの穀物を主原料とする醸造酒を中国では「黄酒(ホアンチウ)」と呼ぶ。その代表格が紹興酒だ。紹興にある鑑湖(かんこ)という湖の水を利用し、地元産の餅米や小麦で醸造されたものだけが紹興酒と認定される。フランスのシャンパーニュ地方のスパークリングワインだけがシャンパンと呼ばれるのと同じだ。
ちなみに「老酒(ラオチウ)」は長期熟成された酒を指す言葉で、紹興酒にも10年、20年、なかには50年熟成された年代物もある。
紹興酒では甜(ティエン、甘味)、酸(スワン、酸味)、苦(クー、苦味)、鮮(シエン、うま味)、辣(ラー、辛味)、渋(スー、渋味)という6つの味のバランスが重要とされる。当然、銘柄によって味が異なり、特に甘さの違いが大きい。一般に年代が増すと味がまろやかになり、香りは濃くなる。着色のため添加物としてカラメルが使われるが、最近はカラメル不使用の紹興酒も増えている。