いま、紹興酒が日本でブーム!(の兆し) 「女児紅」「孔乙己」知ってる?
話を「紹興酒ブーム」に戻そう。兆しがあると言ったが、果たしてどれほどの兆しなのか。
昨年9月に発売された『黄酒入門』(誠文堂新光社、リンク先はアマゾン)の著者で、中国酒に詳しい門倉郷史さんによれば、紹興酒は昔に一度ブームがあり、新たな盛り上がりは2020年あたりからだという。その頃から中国紹興酒業界が積極的に動き始め、これまでなかったタイプの紹興酒も日本に入ってくるようになった。それに呼応するかのように、日本のメディアが紹介する機会も増えた。
「雑誌の企画で、僕がレストランのシェフと組み、紹興酒のペアリングをすることもあります。まだ急増はしていませんが、波は感じています」
日本には探求心の強い酒好きが多く、これまで日本酒やワインをたしなんでいたその酒マニアたちが「未開拓」の紹興酒に興味を持ち始めた、というのが門倉さんの見立てだ。黄酒のイベントを開くと、30~50代の人が大勢集まり、男女比は半々のこともあれば、女性が9割のときもあるという。
全くうれしい兆候だ。女の子が生まれると家で造った酒を土に埋め、嫁に行くときに掘り出して飲むという伝統から生まれた「女児紅(ニュイアルホン)」、酒が飲みたくて本を盗んでしまう哀れな文人を描いた魯迅(彼も紹興出身だ)の短編『孔乙己』から名付けられた「孔乙己(コンイーチー)」......日本人に味わってもらいたい紹興酒はまだまだたくさんある。
中国で今、ジャパニーズウイスキーや日本酒が大ブームになっていることはご存じだろう。中国人が日本の酒を飲み、日本人が中国の酒を飲む。それで双方が楽しく杯を交わせば日中友好はもっと進む──。そんな私の「夢」が酔っぱらいの戯言(ざれごと)で終わらないことを願っている。
周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院を修了。通訳、翻訳、コーディネーターの派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレントとしても活動している。