コラム

一人でオンライン会議中にもマスクいる?──必要なのは科学的根拠

2022年06月17日(金)17時45分
西村カリン
マスク

LEON NEAL/GETTY IMAGES

<コロナ初期から自発的にマスクをしたことは素晴らしいが、今は義務化しないと誰も外さないのでは? 感染リスクのない時には外すという科学的な議論をそろそろしよう>

新型コロナウイルスの影響で、人間のコミュニケーション能力や考える力が低下しているのではないかと心配している。最近、うちの子供がオンラインで授業を受けた。自宅の自室で小学校から借りたタブレットを使ってやっていた。いい感じだったが、息子がマスクを着用していることにびっくりした。

「だって、みんなやっているから」と息子は言う。

新聞にも同じ例が出ていた。子供の気持ちは分かる。自分だけマスクを外して厳しい目で見られることを恐れて、あまり気乗りしなくても着用する。つまり教室にいる子供たちに合わせて、オンラインの場合でもマスクをしていれば精神的に安心していられる。

でも問題はこんなときに、こんな状況でマスクを着ける意味がないことだ。マスク着用はコロナ感染を防ぐためだが、1人で自分の部屋にいるときにいったい誰に感染させるリスクがあるのか。感染するリスクもゼロだ。

私が先生なら、オンラインで授業を受けている子供に対しては、「感染リスクがないからマスクを外してください」と言ったと思う。逆に、マスクが必要なときには、学校に限らず「マスク着用」のルールを守るのは当然で、守らない人には厳しく対応すべきだ。

マスクを着用するかしないかは、「みんな同じだから」という理由でなく、あくまで科学的根拠があるかないかで決めてほしい。

特に子供に対しては、「科学的根拠に基づいて行動する」を強調することが大事だと私は思う。言うまでもなく、子供に意味のない理由で何かをやらせては駄目だ。同じく、意味のないことを子供がしたら、それを指摘して直すのは大人の仕事だ。

ただ残念なことに、大人も無意味なことをしてしまう状況にある。気温30度の蒸し暑い日でも、1人や2人で東京を歩く大人の8~9割はマスクをしている。花粉症対策の人もいると思うが、主な理由はコロナ感染のリスクではなく周りの目だろう。本音は「着けたくない」「意味がない」と思っているが、他人の目が気になるからだ。

しかし熱中症の危険性もあるし、厚生労働省が目安を示したように人との距離が十分取れて、あまり会話をしない屋外ではマスクは必要ない。これは当たり前のことだから、他人の理解も得られるはずだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選

ワールド

北朝鮮、31日発射は最新ICBM「火星19」 最終

ワールド

原油先物、引け後2ドル超上昇 イランがイスラエル攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story