コラム

「そこの外国人!」と注意されて... 日本の道は自転車には危な過ぎる

2020年12月30日(水)11時20分
トニー・ラズロ

Halfpoint-iStock.

<「日本の道路は、車、自転車、歩行者のどれが主役か、はっきりしていない」と、アメリカ人の友人は言う。道路交通法上では軽車両として扱われているのに、日本の道は自転車には危険だ。一輪車にも>

一輪車を通学の手段として使っているアメリカ人がたまにいる。というか、筆者自身がそうだった。自転車の突然のパンクがきっかけで。

ギアもチェーンもない一輪車は、長距離にはあまり向かない。往復12キロの毎日の旅は、しんどいことはしんどい。でも、一輪車には自転車に勝る点が一つあった。

それはコンパクトであること。教室の隅っこに置けたので駐輪場は要らないし、もし自転車レーンでこぎ進んでいるうちにバスを見掛けたら、手を振って止めればいい。片手で持てる小さな一輪車をバスに持ち込んだところ、「変わった荷物だな」と言われる程度で普通に乗車させてもらえたのだった。

「なにごともまずトライ」というわけで、日本でも街の中で一輪車に乗って買い物などをしてみたが、うまくいかない。そもそも「道路で一輪車」というのがどうやら違法らしい。筆者を注意してきた警官によれば、一輪車にはブレーキとベルとライトが付いていないためだ。

今はごく普通のチャリに乗っているが、アメリカ人の友人を自転車の旅に誘ってみたところ、身の危険を感じることを理由になかなか首を縦に振ってくれない。「日本の道路は、車、自転車、歩行者のどれが主役か、はっきりしていない」

その点ではアメリカも日本もどちらも同じくらい曖昧で、自分は同じくらい自転車通行が危ないと感じる。そう反論してみても、「いや、アメリカは車が王様。そこははっきりしているさ」とあっさり。

確かに、日本における自転車の位置付けは気になる。道路交通法上では軽車両として扱われているのに、歩行者として見られるところがある。

例えば東京の都心の広い通りを走っているとき、それをこんなふうに実感できる。左車線は左へ、右車線は右へ曲がるようになっているとすれば、真っすぐ進むためには真ん中の車線にいないといけないはずなのに、そこは走れないじゃないか──。

筆者が最近まで住んでいたヨーロッパでは、大きい通りでも、自転車で堂々と道路の中央を真っすぐ進めた。でも、日本では自転車は真ん中の車線を走ってはいけない。

......そう、これも筆者が警官にしっかり説明を受けて、直接確認した事実なのだ。交差点の近くにいたパトカーから、拡声器で「そこの外国人!」と言われて。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米財政赤字、2月は4%増の3070億ドル 歳出入と

ワールド

プーチン氏、クルスク州訪問 参謀総長「ウクライナ軍

ビジネス

EUが報復関税なら「対応」へ、トランプ氏表明

ワールド

ウクライナ停戦へ前向きなメッセージ受け取る、実現は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたト…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    トランプ第2期政権は支離滅裂で同盟国に無礼で中国の…
  • 8
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 9
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story