最新記事
荒川河畔の「原住民」(27)

「今がチャンス」ホームレスになるため、40歳を過ぎて大阪から上京した男性

2025年4月11日(金)18時05分
文・写真:趙海成

「子供の頃、虫歯があり、両親が僕を歯医者に連れて行ってくれなかったせいで、歯はますます悪くなりました。親の話では、僕が歯医者に行くのをとても嫌がったので、連れて行かなかったそうです。

でも、僕はまだ何も分からない子供だったのに、どうして僕が行きたくないからといって連れて行かなかったのでしょう......。親としてあまりにも無責任ではないですか」

宇海くんは今もそのことが気にかかって忘れられないのだ。

当時、彼の親の仕事は、縁日や盛り場など人通りの多いところで露店や興行を営むいわゆる「テキヤ」(露天商)だった。仕事場は決まりがなく、大阪のあちこちを転々としながら、スーパーや公園の前で雑貨を売っていたという。

両親は所属するグループの親方に呼ばれて、夏休みや正月に神社やお寺などで屋台を出し、くじ引きやかき氷等を売っていた。夏休みは祭りが多く、一番忙しかった。

中学生時代の宇海くんは、時には父親の仕事を手伝ったり、別のかき氷屋でアルバイトをしたりしていたこともあるという。

「母親は元々美容師でしたが、結婚してから美容の仕事をやめて父親と一緒に働いていました。うつ病を抱えていたので、精神状態が時々不安定になり、睡眠薬を飲んで休んでいた印象があります。親同士の関係はギクシャクしていて、ちょっとしたことで口論になり、父親がお皿を投げるのを何度も見ました」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

習主席、ベトナムに協力拡大呼びかけ 14日から東南

ビジネス

アングル:ドル建て資産ヘッジ本格化か、「米国不信」

ワールド

中国輸出、3月は前年比+12.4% 駆け込みで予想

ビジネス

米、半導体などに新たな関税計画 近く発表とトランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    車にひかれ怯えていた保護犬が、ついに心を開いた瞬間...胸に顔をうずめた姿に世界が涙
  • 3
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 4
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 5
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    ひとりでさまよっていた老犬...盲目で耳も聞こえず、…
  • 10
    娘の「眼球が踊ってる」と撮影、目の「異変」は癌が…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 5
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中