韓国、ユン大統領罷免を受けて政界は大統領選へ 野党「共に民主党」イ・ジェミョンが大きくリード
弾劾の経緯と背景
尹前大統領は2024年12月3日、「非常戒厳」を発令、翌4日に国会決議に基づいて解除したが、野党が尹大統領の弾劾訴追案を国会に提出、12月14日に可決した。2025年1月14日から2月25日まで憲法裁判所で弁論が行われ、4月4日に罷免が決定した。
韓国では大統領は国会で弾劾案が可決されると職務が停止され、180日以内に憲法裁判所が弾劾を認容するか棄却するかを宣告する。認容が宣告されると大統領は罷免となり、棄却の場合は公務に復帰する。
現憲法下の弾劾は3人目であり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は弾劾2カ月後の2004年5月14日に憲法裁判所が棄却を下して公務に復帰。朴槿恵(パク・クネ)元大統領は弾劾2カ月半後に罷免となった。今回は弾劾から宣告まで100日を超えており、長引いたことにはさまざまな憶測が飛び交った。全会一致に時間がかかったという推測や、決定文の表現を精査したという見方、世論の流れを見極めていたとの見方もある。
そもそも尹前大統領が政界に進出したきっかけは朴槿恵元大統領の訴追だった。朴槿恵政権が誕生して間もない2013年4月、水原地方検察庁驪州支庁長として国家情報院の世論操作事件で、朴槿恵政権を揺るがしかねない捜査を行ってたとして左遷。2016年12月以降、朴槿恵元大統領の疑惑を追及するなど保守政権と敵対したことから、文在寅前政権になると検事総長に登用されるも曺国の疑惑究明で文在寅政権と対立。これによって反文在寅勢力の次期大統領候補として支持が急騰し、国民の力から大統領選に出馬、当選したという経緯がある。
世論調査にみる国民の評価
世論調査によると、尹前大統領の罷免を「良い決定」とする回答は74%に達し、「憲法裁の判決結果を受け入れる」という回答は87%に上った。また、尹前大統領の「拘束捜査が必要」とする意見は64%で、「必要ではない」という意見29%を大きく上回った。
罷免についてソウル市民の声を聞くと、保守層の会社経営者は「選挙までさらに2カ月、政治の空白が続くことによる影響が心配」と話し、40代の会社員は「憲法裁判所が無罪判決を下しても国会との対立を考えると政権運営が難しくなるだけだった」と話すなど、罷免自体はやむを得ないという考えが目立った。