「逃げられるうちに逃げろ...」騙されてロシア軍に入隊したインド人、仲間からの「悲痛なメッセージ」の意味とは?
ESCAPING THE RUSSIAN ARMY
そこからリャザン市の軍事訓練施設に移送された。リャザンはモスクワの南東約200キロにある基地の町で、精鋭空挺部隊の拠点だ。サルファラーズらは携帯電話とパスポートを没収され、軍服と厚底の革のブーツを支給されて、24時間軍服で過ごすよう言い渡された。
軍事訓練施設ではパンとジャムの軽食をつまみ、トイレ掃除や雪かきといった仕事に従事した。それでも近くで戦闘が行われていることは、片時も忘れられなかった。
毎日、巨大な緑色の軍用トラックがゲートから入ってきた。「指や腕のない兵士を運んできた。足首がない兵士もいた。ある兵士は頭を撃たれたようだった」と、サルファラーズは言う。
だが前線から戻ったあるロシア兵と言葉を交わすまで、自分がどんな契約に署名してしまったのか、彼らは理解していなかった。兵士はつたない英語で、ロシア軍を支援してくれてありがとうと礼を言った。
「だから、ここに来たのはロシア軍支援のためではなく施設で働くためだとみんなで説明した」と、サルファラーズは言う。「すると、ここに戦闘以外の仕事はないと言われた」
数日後、ターヒルがこっそり持ち込んだスマホにボイスメッセージが届くと、焦りは頂点に達した。メッセージを入れたのは、チェンナイで会ったサミール・アフメドとマングキヤだった。
「だまされてウクライナに連れてこられた」と2人は話し、「逃げられるうちに逃げろ」とせき立てた。
続く1週間、サルファラーズらは除隊させてほしいとブローカーと大使館に必死で訴えた。しかし1月17日に将校が来て、翌日3人を国境付近に派遣すると告げた。軍事訓練は一度も受けていなかったと、3人は証言する。
サルファラーズは脱走を決意した。「誰も一緒に来たがらなかったから、1人で逃げることにした」
※後編はこちら:大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍から脱走したインド人を待っていた「人間性のかけらもない世界」

アマゾンに飛びます
2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら