韓国の政治は、なぜ「大混乱」を繰り返すのか...大統領の「帝王的」権力が変わらない理由

KOREA’S IMPERIAL PRESIDENCY

2025年3月20日(木)16時57分
イ・ユンウ(ジャーナリスト)

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釈放された尹を拘置所前で出迎える支持者ら KIM HONG-JIーREUTERS

なにより、尹は立法府(国会)を頭から軽視し、政治的な反対意見を個人攻撃と見なした。元検事総長である尹は、検察庁を味方に付けて裏から手を回し、政治的ライバルや自分を批判する者に嫌がらせをし、自らの不祥事や大統領としての無能さに司法のメスが入らないようにした。

だが、失敗に終わった尹の自作自演クーデターは、シュレジンガーが言う「大統領の権力は、伝統的な政治形態を覆すほど幅広く専断的であるという考え方」を、全く新しいレベルに引き上げた。韓国の人民は、大統領が一夜にして民主主義を転覆できることを知ったのだ。


軍事独裁時代の残念な遺産

長く続いた軍事独裁時代の名残で、韓国の憲法や法令は、大統領に過大な権力を与えている。大統領は1万人近くの政府職員の任用についても最終決定権を持つ。大統領が任命した後に国会の承認が必要なポストは、首相と監査院長だけだ。これに対してアメリカでは、上院の承認が必要なポストは1300に上る。

韓国の大統領は、検察、警察、情報機関、そして税務当局を事実上支配しており、それが不公平な取り締まりや恣意的な法執行を可能にしている。大統領は、計4700億ドル以上の予算案を国会に提出する権限もある。国立大学や放送通信委員会や貿易機関などのトップの任命権もあり、市民生活の深い部分まで大統領の権力が及ぶ。

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