ジョセフ・ナイ「中国よりアメリカが優位な7つの理由」
GREAT POWER GAME
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筆者は「ソフトパワー」でもアメリカ優位とみる CYANO66/ISTOCK
<知日派の重鎮ナイ教授が断言。貿易から軍事、AIまで、トランプ政権は中国を最大の外的脅威とみなしているが、長期的に見れば、アメリカは中国より有利なカードを「7枚」所有している>
トランプ米大統領いわく、中国はアメリカの最大の外的脅威だ。多くの国でアメリカをしのいで最大の貿易相手国となっている。軍事費を増強し、兵力を近代化して核兵器の保有を増やしている。さらにはAI(人工知能)の分野でもアメリカを追い上げている。米国防総省は中国を「刻々と深刻化する脅威」に位置付けている。
重要な戦略の立案には、長期的な脅威を過小評価してはいけないし、過大評価をしてもいけない。アメリカには多くの課題がある。長期的に見れば、私は中国よりもアメリカの手札が有利だと考える。
火星人が地球を訪れたと仮定しよう。2つの超大国が2040年の優位を決めるポーカーゲームをしている。さてどっちに賭けるか? それぞれのカードを透視し、アメリカが有利なカードを7枚所有していると分かればアメリカに賭けるはずだ。
アメリカが持つ最強のカードの1つが地理だ。ネットが世界をつなぐ時代に地理は関係ないとの見方もあるが、アメリカが2つの大洋と2つの友好国に囲まれている一方、中国はインドをはじめ多くの国境問題を抱えている。
2番目に強いカードは人口だ。中国は15年に労働力人口のピークを迎えたが、アメリカは人口と労働力が増加している数少ない先進国でもある。アメリカの出生率は低下しているものの、移民国家らしく移民が流入している。中国はそうではない。