米3月の卸売物価は前月比下落、前年比の伸び鈍化 見通しは関税次第

米労働省が11日発表した3月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は、前月比で予想外に低下した。ワシントンの市場で昨年8月撮影(2025年 ロイター/Kaylee Greenlee Beal/File Photo)
[ワシントン 11日 ロイター] - 米労働省が11日発表した3月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比で予想外に下落した。ガソリン価格の急落が影響した。前月比で下落するのは2023年10月以来、約1年半ぶり。ただ、トランプ米大統領が4月初めに発表した大規模関税で物価上昇が予想されており、3月の統計は実態を反映していない可能性がある。
瞬間風速を映す前月比は0.4%下落。2月は変わらずから0.1%上昇に上方修正された。ロイターがまとめたエコノミスト予想は0.2%上昇だった。
前年比は2.7%上昇。2月は3.2%上昇していた。予想は3.3%上昇だった。
変動が激しい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比3.3%上昇。上昇率は市場予想の3.6%を下回った。前月比では0.1%下落。市場予想は0.3%上昇だった。
トランプ大統領の大規模関税措置発表を受け、4月に入ってから米中の貿易を巡る対立が激化しており、中国は11日、米国からの輸入品への関税を84%から125%に引き上げると発表。米国が中国への関税率を145%としたことに対抗するもので、貿易戦争のリスクが高まっている。
コメリカバンクのチーフエコノミスト、ビル・アダムズ氏は「3月の卸売物価指数は物価見通しを何も反映していない」と指摘。「見通しは関税動向に大きく左右される」とし、「関税措置がこのまま適用されれば、物価は急上昇する」と述べた。
バークレイズのエコノミスト、プージャ・スリラム氏も「3月時点で導入されていた関税措置は現時点よりも緩やかなものだったため、物価圧力は今後増大する」との見方を示した。
<財価格0.9%下落、サービス価格0.2%下落>
財(モノ)の価格は前月比0.9%下落。2月の0.3%上昇から反転し、23年10月以来最大の下落となった。貿易戦争で世界的に経済成長が鈍化するとの懸念で原油価格に影響が出る中、ガソリン価格が11.1%急落したことで押し下げられた。
ただ、鉄鋼製品は7.1%上昇。関税措置で押し上げられたとみられる。
食品は2.1%下落。ただ、食品とエネルギーを除いたモノのコア指数は0.3%上昇と、2カ月連続で上昇した。
サービス価格は0.2%下落。2月は横ばいだった。
関税措置でインフレ急上昇が予想されているものの、内需の鈍化である程度緩和されるとの見方も出ている。実際、3月は航空運賃が4.0%、宿泊料金が1.2%下落した。