ジョセフ・ナイ「中国よりアメリカが優位な7つの理由」
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3番目の労働力不足は、ロボットが補完することで効率化できるとエコノミストは言うだろう。しかしこの点でもアメリカが優位だ。中国では、生産性に関する指標が低下している。
第4のカードであるテクノロジーは拮抗している。ここ数年、中国は最先端技術への投資に力を入れており、太陽光パネルやリチウム電池、EV(電気自動車)といった分野では中国が先行している。AI技術ではアメリカが中国を1、2年リードしていると言われたが、中国のディープシーク社が開発したAIモデルが示すように、中国が徐々に差を縮めている。
第5の金融では、アメリカにはドルという大きな資産がある。世界の中央銀行準備高の6割がドルで保有されているからこそ、アメリカはイランやロシアなどにドルの利用を制限する経済制裁を科せる。アメリカが世界最大の産油国になったこともドルを後押ししている。中国が柔軟な金融市場と法の支配を発展させない限り、人民元が準備通貨になることはないだろう。
6つ目に、軍事力や経済力のハードパワーはアメとムチの力を持つが、文化や価値観などで友好意識を高めるソフトパワーも国力には重要となる。2007年以降、中国はソフトパワー向上を掲げているが、国際調査では中国よりアメリカに好感を抱く国のほうが多い。中国では共産党が市民を厳しい監督下に置いている上、国境紛争がソフトパワーの効力をそいでいる。中国軍がヒマラヤ国境でインド兵を殺害しているとなれば、たとえニューデリーに中国文化を学ぶ学校があっても魅力的には映らないだろう。