最新記事
AI

アメリカはすでに追い付かれた----「AI大国・中国」の台頭とイノベーションの行方

Emerging Chinese AI

ユニークな組織運営方針

1つは「自然な分業」。エンジニアに上下関係はなく、皆がフラットな立場にいる。誰が何を担当するかは上司が決めるのではなく、各自が得意な分野に取り組んだ結果、自然と役割分担がなされていくという。

ディープシークの革新的技術にMLA(マルチヘッド・レイテント・アテンション)がある。メモリー使用量を大幅に削減し、AIの運用コストを引き下げることに成功したこの発見も、「自然な分業」から生まれたものだ。


ある若いスタッフがアイデアを思い付き、ほかのエンジニアの協力を経て数カ月で完成させたという。ディープシークでは若手が思い付いたとっぴなアイデアでも、可能性が認められればその開発にリソースをつぎ込むことが認められる。

そして「競馬方式の排除」だ。中国の大手IT企業では同じ目的を持ったプロジェクトを同時に複数発足させ、競わせることが一般的だ。ディープシークでは競馬方式は無駄が多いとして各自が協力し目標達成することを目指しているという。

なぜ無名のディープシークが、これほどの人材を確保できたのか。梁は「それはわれわれが最も困難なタスクに挑んでいるからだ。トップ人材を引き付ける最大の魅力は、世界の最難関の問題に挑むことだからだ」と、答えている。

「アメリカや日本の企業は時間のかかる基礎研究に取り組むが、中国はすぐに結果の出る応用研究にしか手を出さない」という既存の図式に当てはまらない、中国企業が現れているのだ。

「ディープテック」に専念する新世代の登場は、中国のイノベーションをさらに一段高いレベルに引き上げるだろう。

ニューズウィーク日本版 2029年 火星の旅
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月20日号(5月13日発売)は「2029年 火星の旅」特集。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米カンザスの電池工場、自動車メーカーから早期稼働の

ワールド

トランプ大統領、シリア暫定大統領と面会 関係正常化

ビジネス

バーバリー、人員20%削減へ 通期決算は予想上回る

ワールド

クレディ・スイス元幹部の賞与削減は違法 裁判所が判
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 8
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中