アメリカはすでに追い付かれた----「AI大国・中国」の台頭とイノベーションの行方

Emerging Chinese AI

2025年2月12日(水)16時30分
高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)

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世界を驚かせる最新AIを開発した浙江省のディープシーク本社 ORIENTAL IMAGEーREUTERS

今や中国人は世界のイノベーションを担う主力といってもいい。ポイントはやはり「物量」で、14億人から生み出される知的エリートの数は圧倒的だ。

米経済学者のジョージ・ギルダーは「中国のエンジニア数はアメリカのおよそ9倍、理系の大学卒業生に至ってはおそらく15倍だ。(ディープシーク創業者の)梁文鋒(リアン・ウエンフォン)は、その豊富な人材を自由に利用することができた」と、指摘している。


「千人計画」の本当の狙い

人口の多さに加えて、義務教育の水準も向上している。

梁の出身地は広東省湛江市呉川市覃巴鎮米歴嶺村だ。地図を見ると、山に囲まれた田舎であることが分かる。両親は小学校の教師で経済的に特別恵まれた家庭ではなかったが、子供時代から抜群の数学的才能を発揮し浙江大学に進学した。

都市と田舎、東部と西部の格差はいまだに大きいが、それでも抜群の才能を取りこぼさない程度には教育の整備は進んでいる。

中国は世界最古の試験である科挙の伝統もあり、親世代は自分に学歴がなくても子供は大学に進学させたいという意欲が高い。

1990年代後半からは大学定員の拡大が始まり、高等教育進学者数は1000万人を超えた。旧ソ連からの流れをくみ、大学定員は理系学部が中心だ。

こうして生み出された理系人材だが、そのトップ・オブ・トップの多くは国外に移住してきたという歴史がある。この頭脳流出をいかに食い止めるか、人材をいかに呼び戻すかが中国政府の課題だった。

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