アメリカはすでに追い付かれた----「AI大国・中国」の台頭とイノベーションの行方

Emerging Chinese AI

2025年2月12日(水)16時30分
高口康太(ジャーナリスト、千葉大学客員教授)

銭は1911年生まれ。中国出身だが、留学を経てアメリカに移民し、マンハッタン計画にも参加し、一流科学者として活躍した。米国籍を取得したが共産主義者との嫌疑をかけられ、中国に戻る。帰国後はロケット開発の陣頭指揮を執り、「ロケット王」とたたえられた。

現在、安全保障の観点から中国人研究者、留学生に対する風当たりが強まるなか、アメリカから中国に戻る研究者や留学生が増えている。

アリソン教授は「大学のスポーツチームは世界の才能のあるアスリートを採用するのに、なぜ『チームUSA』は中国との競争で違った手法を採るのか。銭学森、潘梓正の喪失を繰り返さないよう、できる限りのことをするべきだ」と提言している。


世界の知的エリートを集めてきたのがアメリカのイノベーションの源泉だが、今後もこの体制が続けられるかは未知数だ。

ドナルド・トランプ米政権の中でもイーロン・マスクなどのテック右派は専門職人材のビザを拡充すべきと主張する一方で、トランプ支持者本流のMAGA(アメリカを再び偉大に)派は外国人排斥を主張する。

もう1つ、見逃してはならないのはディープシークのユニークな組織運営方針だ。2024年7月、中国テック・スタートアップ専門メディア「36kr」が梁のインタビューを掲載した。その内容を見ると、同社が普通の中国企業ではないことがうかがえる。

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