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荒川河畔の「原住民」(20)

「僕はホームレス」その長い髪とひげには「理由」と「秘密」がある...

2025年1月31日(金)14時40分
文・写真:趙海成

それに気づくと、わざとベビーカーを押して小走りになった。すると緊張感が走って警察官は急ブレーキをかけ、パトカーを降り、早足で追いついてきたという。

警察官はベビーカーの中に何も入っていないのを見て、誤解だと気づいた。

おそらく、警察がまたこのような通報を受けたときには、まずその「容疑者」が長髪のホームレスかどうかを事前に確認するだろう。

長い髪とひげがホームレスの生活を守ってくれる

ここまで読んだ皆さんは、長い髪とひげが余計な誤解を招く以上、短くすればいいじゃないかと思うかもしれない。

しかし、征一郎さんが言った3つの理由を聞くと、長い髪とひげを残しておくことが彼にとっていかに重要であるかが分かる。

理由の1つは、自分が「あの長髪のホームレス」だと周囲に知らしめることだ。

征一郎さんは荒川河川敷に何年も住んでいる。

赤羽と志茂にあるいくつかのゴミ収集場所に、以前よく通っていた。

おじいさんやおばさん、ビルの管理人は、長髪のホームレスの彼を知っており、彼が毎日そこにたくさん置いてあるアルミ缶を取りに来ることを黙認していた。突然長髪が短髪になり、彼らに認知されなければ、困ることになる。

理由の2つ目は、冬になると髪やひげが寒さを防ぎ、保温する役割を果たすことだ。

征一郎さんの話は、少しこじつけのように感じるかもしれないが、実は科学的根拠がある。髪とひげは皮膚を保護する天然のバリアだ。放熱量を減らし、寒さを防ぎ、日焼けを避け、転んだときの衝撃を減らす効果もある。

そのため、長い間野外で生活しているホームレスにとっては、長髪やひげを伸ばすことは邪魔ではなく、むしろ必ず必要なことであることが分かる。

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