カーター元米大統領の外交政策――低評価の2つの理由とその背景を検証

Carter Was a Foreign-Policy Visionary

2025年1月7日(火)16時34分
ジョナサン・オルター(元本誌コラムニスト)

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鄧小平とホワイトハウスで(79年1月) GLASSHOUSE IMAGES/AFLO

だが、彼らの帰国から程なくして合意は崩れ去った。すると半年後、カーターは側近の反対を押し切ってエジプトとイスラエルを訪問して和平の枠組みを再構築。79年3月26日、両国の平和条約への署名が実現した。

キャンプデービッド合意は、第2次大戦終結以降で最も長続きした外交的成果となった。「彼の中東での成果は、どの歴代大統領もなし得なかった偉業だ」と、カーターに助言していたアベレル・ハリマン米外交官は語る。


中国の急成長の契機に

カーターの功績はアジアにも及んだ。72年に中国への扉を開いたのはリチャード・ニクソン大統領だったが、国交正常化によってその扉を実際にくぐったのはカーターだ。

これは必然的な成り行きではなかった。右派の圧力を受けたニクソンとフォードは実現不可能な「二つの中国」を掲げ、台湾との断交と中国の完全な外交承認に踏み切れなかった。それを79年に実現させたのがカーターだった。

カーターが同年、中国の最高指導者・鄧小平をワシントンに招いた後、鄧は私有財産を合法化した。一連の改革開放政策を機に中国は急速な経済成長を果たし、米中関係は現在、善くも悪くもグローバル経済の基盤となっている。

ただし、カーターは在任中は中国国内の弾圧に対して声を上げなかった。名高い人権イニシアチブは一貫して発揮されたわけではなく、冷戦下の優先事項と衝突した際はしばしば偽善的だった。

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