カーター元米大統領の外交政策――低評価の2つの理由とその背景を検証

Carter Was a Foreign-Policy Visionary

2025年1月7日(火)16時34分
ジョナサン・オルター(元本誌コラムニスト)

newsweekjp20250107034224-87b3108613369ec2f7dec356624ce8f62bd6b40f.jpg

イスラエル、エジプトの首脳とキャンプ・デービッド合意を発表(78年9月) ARNIE SACHSーCNPーSIPA USAーREUTERS

カーターは1977年の大統領就任初日に最初の目立たない功績を残した。

徴兵忌避のためカナダなどに逃れた者への全面的な恩赦を発令したのだ。ベトナム戦争終結から2年足らずでの恩赦は長引く「傷」を癒やすための大胆な決断だったが、激しい非難を浴びた。前任のジェラルド・フォードも大統領選でカーターに敗れた後のレームダック期間中に恩赦を与えるよう助言されたが、拒否したほどだ。

カーターはたとえ政治的に不利になっても、常に強い義務感と責任感に基づいて行動した。

パナマ運河の返還条約の批准を米議会に認めさせたのも、その一例だ。76年大統領選の共和党指名獲得レースでは、パナマ運河の返還反対を掲げたカリフォルニア州知事のレーガンが現職のフォードを脅かす支持を集めた。

カーターも条約の批准を目指すのは2期目まで待つべきだと助言されていたが、勇気と政治的手腕を駆使して正しい判断を下した。


中東和平でも同様に、多大な政治的リスクを取った。78年9月、イスラエルとエジプトの指導者をアメリカに招き、極秘裏に和平交渉を取り持ったのだ。キャンプデービッドでの13日間の交渉中に両国首脳は何度も怒り、席を立って帰国すると脅したが、カーターの驚異的な粘り強さによって、和平の枠組みを定める2つの合意に署名した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬

ビジネス

中国人民銀、アウトライトリバースレポで3月に800

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費

ビジネス

日産とルノー、株式の持ち合い義務10%に引き下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中