最新記事
日本経済

困窮家庭を直撃する物価高、肉や卵もぜいたく品に

2024年12月4日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

米だけではなく、他の食品も値上がりしている。日本人のタンパク質の摂取量が戦後初期の頃と同レベルにまで低下しているそうだが、魚や肉が高くなっているためでもあるだろう。タンパク質の主な供給源について、100グラムあたりの値段を計算すると<表1>のようになる。1~9月の平均値が、10年間でどう変わったかを見たものだ。

newsweekjp20241204015243-eb21ff3a1060d47c8011a46de3210426ee12502c.png


9つの食材のデータだが、どれも値上がりしている。サケは1.5倍、サンマに至ってはほぼ倍増だ。あと10年もしたら,魚・肉・卵は高級品の部類になっているかもしれない。

困窮家庭にすれば現にそうなっているようで、9月22日の毎日新聞に「肉や卵もぜいたく品、不安抱えるシングルマザー」という記事が出ている。タンパク質は血肉、すなわち「体」をつくる重要な栄養素で、魚・肉・卵が口に入らないとなると、子どもの健全な育ちが脅かされる。

物価が上がるのは、原材料費や物流費の高騰にもよるので、ある程度仕方のない面もある。しかし、可処分所得が増えないのに、物価だけ上がるのはキツい。そこで政府の出番となるのだが、現金や食券の配布といった「一時しのぎ」の策ではなく、奢侈品を除く食品については消費税を軽減ないしは撤廃することが求められる。

過去最高を更新し続けている政府の税収を見ると、増えているのは消費税だけで、法人税や所得税は減っている。国民の「食」を保障するうえで、政府ができることはあるだろう。

<資料:総務省『家計調査』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中