最新記事
日本社会

若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感

2024年11月20日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

一段上の20代前半は、受験の重圧からは解放されている。大学等に在籍し、自己アイデンティティー確立のため、勉学や各種の体験に勤しんでいる者、新社会人になって将来への希望に胸を膨らませている者が多い。

要するに後先のことを展望して生きているのだが、今では先行きが著しく不透明になってしまっている。高い給与は期待できない、上の世代を支えるための税金をガッポリ取られる、奨学金を長期にわたって返していかないといけない、結婚など夢のまた夢......。

20代前半男性のうち「これから生活が悪くなっていく」と答えたのは、1990年では5.0%だったが2023年では24.3%にもなっている(内閣府『国民生活に関する世論調査』)。将来展望の閉塞は、青年層の「生」にも影を落とす。<図2>は、20代前半男性の将来展望閉塞と自殺率の推移を重ねてみたものだ。

newsweekjp20241120104031-fdc1c56c7051b4d77e3c0a6b029f8be3d9918b83.png


約半世紀のトレンドだが、2つの曲線の推移はおおむね似ている。相関係数は+0.7158で、共変関係があると言っていい。中高年の自殺率は失業率と強く相関するのだが、前途ある若者にあっては展望不良の影響が大きい。

「物事を悪いほうにしか考えられない、ひ弱なメンタルだ」などと責めるのは筋違いだ。客観的に見ても、今の若者にはかつてないほどの不利な条件がのしかかっている。<図2>のグラフを見ると、ここ数年で展望不良の率がグンと上がっているのは脅威だ。

国としてまずなすべきは、若年世帯が稼ぎの3割を税金等で持っていかれる事態を変えることだ(「この四半世紀でほぼ倍増した若年世代の税負担率」(2023年8月16日、本サイト)。

<資料:WHO「Mortality Database」
    内閣府『国民生活に関する世論調査』
    厚労省『人口動態統計』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

牧野フライス労組、ニデックTOBに「強く反対」 十

ワールド

ベトナム、対米関税引き下げへ LNGや自動車など

ワールド

米選挙投票、市民権の証明義務付け トランプ氏大統領

ビジネス

モルガンS、中国株価指数の目標引き上げ 今年2度目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中