スキージャンプ髙梨沙羅と行くパラオ、気候変動危機の最前線に迫る【大統領インタビューも実現】
髙梨さん 日本の協力はパラオの気候変動対策にどのように役立っていますか?
ウィップス大統領 パラオは2032年までに再エネ比率を100%にすることを目指しています。現在、JICAの協力で導入に向けた調査が進められている海洋温度差発電(OTEC)*は、クリーンで安定したエネルギー源であり、脱炭素化に役立つでしょう。OTECを進めている久米島(沖縄県)から学んだことは、電力だけではなく、海洋深層水を活用した産業の発展も望めるということです。ぜひそれをパラオで実現し、脱炭素化を世界に示したいと思っています。
テスト運行中の路線バスシステムも、人々の車依存を減らし、二酸化炭素の排出量を減らすために有効です。将来的には、電気(EV)バスや水素バスを使用するなど次のステージに進めたいですね。
*海洋温度差発電(OTEC)...表層海水と深層海水の温度差を利用する発電システム。沖縄県久米島で、発電の際に汲み上げた海洋深層水を飲料水や養殖業、農業に活用する実証事業が進められており、電気と共に産業も生み出す「久米島モデル」として注目を集めている。
自然の中で暮らす私たちがやるべきことは?
パラオのさまざまな場所で、気候変動対策に関わる人たちに話を聞いてきた髙梨さん。「至る所にJICAの協力があって驚きました」と話します。
「私自身、気候変動を深刻な問題と捉えていて、雪不足でスキージャンプの試合が中止になることや人工雪をジャンプ台に貼り付けて開催することも増えてきており、この現状に危機感を持っています。今回のパラオ訪問で、雪や山だけにフォーカスするのではなく、『世界をもっと広く見なければ』という意識を持ちました。海や山を含め、私たちの生活は自然に守られていると思います。その中で生活している以上、私たち一人ひとりが気候変動問題に取り組んでいく必要があると思いました」
髙梨 沙羅(たかなし・さら) スキージャンプ選手
1996年生まれ。小学2年生からジャンプを始め、2018年平昌冬季五輪で銅メダル獲得、国際スキー連盟(FIS)ワールドカップで男女通じて歴代最多の通算63勝をあげるなど世界で活躍を続けている。各国を転戦する中で、雪山への影響をはじめとする気候変動問題に危機感を持ち、2023年に「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ。自ら積極的に環境保護活動に取り組んでいる。
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