「彼女が言うんだ。もう大丈夫だって」優しく哀しい死刑囚が見た夢
Pastor to the Condemned
システムに腐臭が漂う
もう二度とこんなものは見たくないと思っていた。ところが後に、テネシー州のある死刑囚と会うことになる。2018年10月、83年に2人の男を射殺したエド・ザゴルスキーが刑の執行を控えており、私は彼のもとへ行った。
その日が近づくと、奇妙な儀式が始まる。エドの健康を確認するため、看守が毎日やって来る。聴診器を胸に当て、採血をして薬を飲ませる。皮肉にも、彼らはエドをすぐに殺せるよう、彼に問題がないことを確認したかったのだ。
エドの最後の日に私が行くと、彼はなぜか興奮していた。「あんたにローリーのことを話したくてね」。エドは若い頃、ローリーという女性を愛したが、うまくいかなかった。エドの収監中、弁護士がローリーの死去を知り、彼女の墓の写真を持ってきた。
「ゆうべ、死後の世界がどんなものかを教えてくれる夢を見たよ」。エドは、ローリーと一緒に緑の芝生の上に立っている夢のことを話した。死刑囚は監房で、常にコンクリートの上にいる。「彼女が言うんだ。もう大丈夫だって」
私はエドに、それは夢ではなく、神が与えてくれた未来の「ビジョン」だと言った。彼はそのビジョンを電気椅子にまで持っていった。最後の言葉は「さて、始めようか」。エドは心の中で、手を伸ばしてローリーの手をつかもうとしていただろう。
欧米で死刑制度があるのはアメリカだけだ。EUは死刑廃止を加盟の条件にしている。ヨーロッパから見れば、私たちはとんでもない野蛮人だ。
私たちがつくり上げたシステム全体が、ぼろぼろに腐食している。刑務所に関わる全ての人が腐っている。内側からむしばまれている。
この国の刑事司法制度に、正義は存在しない。
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